老人は寝てばかり。そんなイメージを持っている人はいらっしゃいますか?
「高齢になった親がいつもウトウトしている。」「最近寝てばかりで日中もぼーっとしてしまう。」
寝てばかりいる高齢者の家族がいる方やご本人にとって、これは老化によるものなのかそれとも何かの病気なのか?と不安になることもあるかと思います。
そこで今回の記事では、現在、高齢者の家族をケアしている方や老人ホームやデイサービス等の施設で介護・介助を行っている方に向け、老人が寝てばかりになってしまう原因や関わり方のポイント、注意したい点などについて解説してまいります。
どうぞ最後までご覧いただき皆様に役立ちますと幸いです。
目次
老人が寝てばかりいる「傾眠傾向」とは?
老人が寝てばかりいる状態は「傾眠傾向にある」とも言われます。
傾眠傾向とは意識障害の一種で、その特徴としては浅い眠りであること、呼びかけ等の軽い刺激によって意識を取り戻すこと、しかしそのまま放っておくと再度眠ってしまうといったことがあります。
老人が寝てばかりいる原因
老人が寝てばかりいるのは加齢によるものなのでしょうか?考えられる原因をいくつか紹介していきましょう。
寝てばかりなのは老化現象の一つ
寝てばかりいるという症状は、加齢によって表れる老化現象の一つです。
人は歳をとると脳や身体の機能や体力が衰えていき、元気に起きている時間というのは必然的に短くなっていきます。
いくら寝ても日中ウトウトしてしまったり、周囲の人に起こされてもすぐにぼーっとしてしまうことが増えていきます。
更にこの状態が進むと、うたた寝の時の眠りが深くなり周りが声をかけたり肩をたたく程度では起きないくらい眠ってしまったり、脳機能が低下することで幻覚が現れるケースも。
認知症の初期症状
認知症になると日中に眠り夜になるとはっきり覚醒するという昼夜逆転現象が起こりやすくなります。
夜しっかり眠れないため日中起きていられない。更に無気力になるという初期症状もあるため、周りから見ると「寝てばかり」という印象を持たれてしまうかも知れません。
過眠症
睡眠障害の一つに「過眠症」というものがあり、これは老人に限らずどの年齢の方でも起こる可能性があります。
過眠症になると夜しっかり睡眠をとっていても日中に猛烈な睡魔に襲われて眠り込んでしまうことがあります。
眠ってはいけないような場面でも発作のように強い眠気に襲われて突然入眠してしまう「ナルコレプシー」という病気もあるため、様子が気になったら早めに医療機関を受診しましょう。
慢性硬膜下血腫
脳疾患である「慢性硬膜下血腫」は、頭を打った時などに脳と硬膜の間に血種ができて脳を圧迫してしまう病気です。
この血種が大きくなると傾眠傾向の症状が現れ、気付かないまま放置すると時間の経過とともに頭痛や片側の麻痺、歩行障害等といった症状に進行していきます。
外科の手術が必要となるケースがほとんどなので早めの受診をしましょう。
パーキンソン病
パーキンソン病も睡眠に問題を起こしてしまう疾患です。
覚醒の維持に関係する神経伝達物質に異常な変化を起こし、夜に覚醒して不眠となり日中眠くなってしまったり、夜間の頻尿、薬の副作用なども原因となります。
内臓疾患
脳の他にも腎臓や肝臓といった体の代謝に関わる臓器に問題があると傾眠傾向などの意識障害を生じることがあり、適切な治療を受けることでおさまります。
眠くなるだけでなく発熱したり、時間が分からなくなったりといった症状が出る場合は一度内科を受診したり検査を受けてみることをおすすめします。
低血圧、低血糖
寝てばかり、というより食後のタイミングで眠気に襲われる場合は低血圧が原因である可能性があります。
食後は消化器系の器官に血流が集中するため、頭に血がまわらずフラフラとめまいがしたり、眠くなってしまうことがあります。その際はこまめに水分補給をして脱水を避け血圧が低下することを防ぎましょう。
また、食事によって急激に血糖値が上昇しインスリンが過剰に分泌されると、逆に血糖値が急降下して低血糖の状態となりだるさや眠気があらわれることがあります。その際は昼食を食べる量や食事の内容、特に糖質の量を見直しましょう。
治療として降圧剤を服薬していたり、糖尿病に罹患していて血糖値を下げる薬を服用している場合には医師に相談してみることも重要です。
薬の副作用
普段服用している薬の副作用として眠気を引き起こす場合も少なくありません。
脳細胞の興奮を抑える働きを持つ抗てんかん薬やアレルギーの際に飲む抗ヒスタミン薬は眠気の副作用を起こす成分が入っていることが多いため、使用している場合は調べてみましょう。
また、車の運転や危険を伴う作業を行う方、日中の眠気で日常の生活に支障をきたす心配がある方は医師や薬剤師に相談し、量の調整や眠くなる成分が入っていないあるいは少ない薬に変更してもらうと良いでしょう。
老人が寝てばかりいる時の注意点
日中に傾眠傾向があっても、一般的に「うたた寝」しているように見えるため最初は心配することも特になく放置してしまいがちです。
しかし寝ていて食事や水分をとらないことで栄養不足や脱水症状に陥ったり、動かないことで運動不足となり筋力や体力の低下を引き起こしたり、転倒や食事中の誤嚥などのリスクが考えられ注意が必要です。
老人が寝てばかりいる時の対処法
以上のように老人が寝てばかりいるのにはさまざまな理由が考えられます。
正しい対処法の知識を持ち適切な対応をすることで、改善や予防が出来る可能性が高くなるとともに、本人や家族が安心して過ごしやすくなります。
話しかける、出かける
周囲の人は日中、ウトウトしてしまう前に出来るだけ自分から話しかけて会話やコミュニケーションをとる機会を増やしてみましょう。
天気の良い日には外に連れ出してあげ、散歩や買い物に行って外で過ごすことも運動不足の解消やストレス発散にもなりおすすめです。
また、日中に活動をすることで夜ぐっすり眠ることができるようになるという効果も期待できます。
短時間の昼寝
次に、思い切って昼寝の時間を設けるということも一つの方法です。とはいっても、長く昼寝をしてしまうと結局夜の睡眠に影響が出てしまいます。
そのためしっかりと時間を決め、30分程度の短い時間におさめることが大切です。
医師に相談
傾眠傾向の原因を説明した通り、老人が寝てばかりの時には病気が隠れている可能性もあります。
早期発見、早期治療を行うことで回復も早くなりますから、出来るだけ早めに気付いてかかりつけの医師に相談することをおすすめします。薬の種類や副作用についても合わせて確認してみて下さい。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
寝てばかりの老人を見ていても、単に加齢によるものだけだと感じ、素人にはそれが病気によるものだと判断することは難しいでしょう。そのため、ある程度原因の可能性を知っておくことが大切です。
放置してしまうと初期の段階で病気を見逃したり、悪化してしまう恐れがあるため、気になった時には病院を受診し、医療の力を頼る必要があります。
また、日中は出来るだけ話しかけたり外へ出かけたりといった行動をすると夜の睡眠の質が良くなり、日中の眠気の改善に大きな効果が期待できます。
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