老人の一人暮らしのことを「独居老人」と呼ぶことがありますが、そこには少しネガティブなイメージがありますよね。
おじいちゃん、おばあちゃんから孫まで、家族みんなで暮らしていた頃と時代は変わり、現代の日本では親と子の世帯が別々に住む核家族化や少子高齢化、更には独身率も増加傾向にあることから、結果、一人暮らしをする高齢者が増えているのが現状で、今後も多くなっていくことが予測されています。
老人の一人暮らしには心配や不安な面も多いため、さまざまな周囲の協力と対策が必要ですが、一人暮らしを楽しみ、生き生きと暮らしている高齢者の方もたくさんいらっしゃることも事実。
今回の記事では、老人が安全に、そして本人も周りも安心して一人暮らしを行えるような生活や考え方のポイント、取るべき対策、注意点等を解説してまいります。
どうぞ最後までご覧いただき、参考にしていただければと思います。
目次
老人が一人暮らしを楽しむために必要なこと
老人が一人暮らしをする理由には、同居する家族がいない、家族はいるが同居はしたくない、家族が遠方におり住み慣れた家、地域から出たくない等、さまざまな状況があります。
老人が一人暮らしと聞くと何となく可哀想と思ってしまいがちですが、自らの希望で一人暮らしをしている方も実は少なくありません。
現在、65歳以上の単独世帯は769万世帯であり、女性が男性よりも2倍以上多い割合となっています。実際、女性の方が長生きであるためでしょう。内閣府が行った「令和3年版高齢社会白書」の一人暮らしの高齢者に対するアンケート調査によれば、「今のまま一人暮らしでよい」と回答した方が約7割強ととても多いのです。
とはいえ体調を崩してしまったり一人で健康的な生活が送れないのであれば、一人暮らしを続けることは難しいですよね。
そこで必要となるのが「QOL」です。
最近は医療や看護、介護の現場だけでなく、一般的にも広まっている言葉で「クオリティオブライフ」つまり「生活の質」という意味があります。
老人が一人暮らしを楽しむためには、このQOLを高めることが重要なのです。
それではQOLにはどのようなことが影響するのか、以下に一覧で主なものをまとめてみました。
<老人の一人暮らしを支えるQOL>
・健康状態(体力、認知機能、日常生活の動作の向上など)
・経済状況(所得、貯蓄、就労など)
・社会とのつながり(地域の活動、習い事など)
・生活環境(身近に頼れる知人がいる、安定して暮らせる住まいがあるなど)
以上の要素が高まることで、一人暮らしはもちろん人生が充実し、幸福感が得られると言われています。
食事が適当になってしまったり、自宅に引きこもって体を動かさなかったり、ストレスを抱えていたりするとQOLは下がっていき、一人暮らしを続けたくても続けられない状況を招いてしまうことになります。
老人の一人暮らしで抱える問題
高齢者の方が一人暮らしを希望していたり楽しく生活を送っている場合でも、やはり高齢であることで抱える問題や不安は出てきます。
前もってそれらの知識を得ておくことは必要な対策を知ることにもなります。
<病気、孤独死>
誰しも加齢とともに病気やケガをしやすくなるものです。
誰かと同居している場合は、助けてもらったり介助してもらうことが可能ですが、一人暮らしの場合、病気をしたりケガをしてしまうとそうもいかず、普段なら出来ることも対応できない事が出てきます。
また、最悪の事態として孤独死の恐れもあります。
<介護>
今は身体や心に問題がなく元気に過ごすことが出来ていても、今後いつ体が動かなくなるか分かりません。認知症が発症する可能性だってあります。
介護が必要になった時、しっかりと支援を受けられるように介護費用の負担についてもあらかじめ考えておくことが重要です。
心身に不安があると外で人とコミュニケーションをとる機会も減り、生きがいがなくなったりと症状が悪化してしまうケースもあるのです。
<災害、犯罪>
日本は地震など災害が多い国。一人暮らしの場合、災害時は非常に不安かと思います。
そんな時に備え、普段から地域の住民や自治体、行政とつながることがとても大事です。
災害の他にも、高齢者を狙った振り込め詐欺や悪徳商法などの犯罪は年々増加していることにも注意しなくてはいけません。
<お金>
会社をリタイアし年金だけで生活していく老後。やはり経済的な面に不安を抱える高齢者は多いです。
健康で自立して生活出来るならばまだしも、ケガや病気をして治療や入院をしなければならなくなったり、介護が必要になった場合、その分の費用もかかるようになります。
お金の計画や金銭管理についてもどうしていくのかを考えておきましょう。
老人の一人暮らしを支える対策
高齢者の皆様が安心、安全に生活するためには、さまざまな支援やサービスを活用していくことが大切です。
<介護サービス>
老人ホーム等に入居をしなくても、訪問介護や訪問リハビリ等、自宅で暮らしながら専門のサポートを受けることが出来ます。
また、通所介護(デイサービス)を利用すれば外に出る機会ができ、他の入所者や施設のスタッフと交流することが良い刺激になります。仲の良い人ができたり趣味や生きがいが見つかると、生活する上で楽しみが増えるでしょう。
これらは介護保険制度のサービスになりますので、要介護認定を受け、要介護の認定をされることが必要となります。地域包括支援センターや自治体の窓口に相談をしてみて下さいね。
<見守り・安否確認サービス>
自治体などによる公的機関や民間企業が実施している見守り、安否確認サービスを利用することも安心につながります。
センサーを設置して室内を監視するシステムや、電気、水道の検針員が訪問する際に声かけを行ったり、お弁当や日用品の配達と合わせて確認を行う等さまざまな形のものがあります。
特に食事を届けてくれるサービスはおすすめで、高齢者の一人暮らしは食生活が乱れ栄養不足になってしまうケースが少なくありません。
食事の用意をする手間や火を使うリスクを抑え、栄養のバランスの取れた食事が取れるというメリットもあります。
他にセキュリティ会社による緊急時の駆けつけや緊急通報を行うサービスもあります。
老人が一人暮らしをする時の物件選び
高齢になって一人暮らしをする場合、元々一人暮らしをしていた方、子どもが独立して家を出た、夫婦で住んでいたが配偶者が亡くなった等、さまざまな状況があります。
持ち家がありそのままそこで暮らすのであれば問題点はあまりありませんが、例えば広すぎて移動や掃除が大変なので自宅を売却するケースや、賃貸でもファミリータイプからシングルタイプに引っ越す方もいるでしょう。
そこで高齢者が賃貸物件を探す際、若い人とは違う重視したいポイントを紹介します。
<家賃の支払い>
多くの高齢者の場合、家賃や生活費は預貯金と年金から支払っていくことになります。
長い目で見て支払いに問題がないかを考え、無理のない範囲内で物件を探しましょう。
体が元気であれば高齢者の方を募集しているアルバイト等もありますので収入を得ることも出来ますが、ケガや体調不良で休んだりいつまで続けられるかは不確定な要素ですので、収入がなくなっても住めそうな家賃の物件を選ぶ方が安心です。
<バリアフリー>
加齢により自分が思っているより足が上がらなくなったり、体力が低下していくことを考え、生活しやすい間取りや造りであるかも大切な要素です。
段差が多かったり、部屋までの階段が多かったり、お風呂が入りづらかったりすると転倒の恐れやQOLの低下にもつながってしまいます。完全なバリアフリーである必要はありませんが、動きにくいな、生活しにくそうだなと感じる部屋は避けた方が良いでしょう。
<周辺環境>
近くに家族や親族、友人など誰か気軽に頼れる人が住んでいる、相談できる行政機関の窓口がある、買い物に必要なお店や病院があるかどうかも、物件選びの時に考える必要があります。
また、お出かけに必要な交通手段についても事前に確認しておきましょう。
最近は家が遠い方や移動が困難な方など、高齢者の方に対して商品を配送してくれるサービスを提供しているスーパーや訪問診療をしてくれる病院も多いため、便利なエリアから離れて暮らす場合はそのようなサービスやサポートについて調べておくことをおすすめします。
<高齢者向けの賃貸住宅>
賃貸物件の中には高齢者を対象にしたものもあります。
そのような物件はバリアフリーや高齢者に嬉しい設備、サポートが始めから整っていることがほとんどですので、一人暮らしに不安を感じる場合に特におすすめです。
ただ、公的に運営されている物件と民間企業が運営している物件があり、家賃やサービス内容はそれぞれ違いますのでよく調べて検討して下さい。
老人の一人暮らし、その後の選択肢
高齢者の方がさまざまな原因により一人暮らしに限界を感じたら、施設に入居するという選択もあります。
施設にもたくさんの種類があり、各施設によって入居できる条件は異なりますが、医療ケアや介護のサポートを受けられる施設が多く、個室を選べば一人暮らしのようにプライベートな空間を持ちながら他の人やサポートしてくれる人が常に近くにいてくれるという安心感も得られます。
気になった事業所があればぜひ積極的に無料の見学や体験に参加してみましょう。
日本は福祉のサービスが思っている以上に手厚いですから、ぜひご自身に合ったサービスを選択してみて下さい。