老人が健康で長生きするために「食事」は非常に大切な要素になります。
何を食べるのか、どのように食べるのか。
高齢者ならではの食事で注意したいこと、気にかけなければならないことは多いため、介護をされている方にとっては悩みの種だったりしますよね。
そこで今回の記事では、高齢者の食事に関して意識したいポイントや注意点を解説します。
どうぞ最後までご覧いただき、皆様に役立ちますと幸いです。
目次
老人の食事はなぜ注意が必要なのか
高齢者の食事に気を付けなければならないのはなぜなのでしょうか。その理由として主なものを以下に紹介します。
身体機能の低下
高齢になるにつれて腰や膝など身体の機能が低下していきますが、実は「食べる」という行為に必要な機能も低くなるのです。
まず、歯が減ってしまったり、顎の筋力が低下して咀嚼、つまり食べ物を噛む力が弱くなります。
そのため硬い繊維のある肉などが噛み切れなくなったり、硬い食べ物が噛めなくなって軟らかいものばかり食べることで更に噛む力が衰えてしまいます。
また、唾液の分泌量が減って噛んだ食べ物をうまく飲み込めず誤嚥を起こしやすくなるため、水やお茶等の水分を飲んだだけでむせてしまう老人を多く見かけます。餅などを食べる際は注意が必要です。
更に舌や口の中にある味蕾(みらい)という味覚を感知する部位が加齢により減少し、味覚が鈍くなるという現象も生じてきます。
そのためしっかり味がついているのに薄いと感じ濃い味を好み、健康に悪い影響を及ぼしたり、味がわからなくなることで「おいしい」という感覚が減り、食欲や食事の量が減ってしまうこともあります。
栄養バランスの偏り
一人暮らしや、同居している家族が仕事などで外出していて日中を一人で過ごしている老人の中には、食事の支度が面倒でつい手軽に食べられるパンやカップ麺、お茶漬け等で済ませ食生活が乱れてしまう人が多くいます。
好きなもの、食べやすいものだけを食べるという人もいるでしょう。
すると結果として、必然的に栄養バランスが偏り、不足する栄養素が増えていきます。
中でもビタミンやミネラル、たんぱく質や食物繊維といった高齢者に特に必要とされる栄養素が不足がちになってしまうのです。
老人の食事に必要なこと
食事で十分な栄養が摂取できなくなると、病院で点滴を打ったりサプリメントで補う方法がありますが、やはり一番重要なのは「口から食べられるようになること」です。
というのも、食べるという行為は味覚だけでなく視覚や臭覚も使い、顎や喉など体の力も使うため、脳への刺激になり認知症や老化の予防につながります。
他にも口の中で噛むことで唾液が分泌され口内環境を改善したり、胃や腸等の消化器官を働かせることも出来ます。
口から食べることの重要性を頭に入れ、具体的に高齢者に必要な食事の量や栄養素についても説明します。
老人に必要な食事量(カロリー)
1日に必要な摂取カロリーは年齢と性別によって異なります。
65歳~74歳:男性2050~2400kcal、女性1550~1850kcal
75歳以上:男性1800~2100kcal、女性1400~1650kcal
体格や活動する量よっても必要な量は変化しますが、大まかに上記の数値を目安に摂取することが推奨されています。
老人に必要な栄養素
加齢により骨が弱ったり骨密度が減っていく傾向にありますので、骨を形成するためのカルシウムはとても大切です。
また、筋肉を作るために必要なたんぱく質も必要で、不足すると疲れが取れなかったり太りやすくなるといったことが起こります。
最近、高齢者だけでなく日本人全体に不足が指摘されているビタミンDも、カルシウムを吸収を促進するため大切な栄養素です。
ビタミンDは日光を浴びることで体内に生成されるのですが、特に高齢者は外に出る機会が減って家の中に引きこもりがちになり、不足しやすくなる傾向にあるのです。
一方、摂り過ぎに注意しなければならない栄養素もあります。
まずは塩分です。
先に述べたように味覚が鈍り濃い味を好むようになったり、カップ麺等のインスタント食品やコンビニ弁当などを食べる頻度が増えると塩分は簡単に過剰摂取な状態になってしまいます。
塩分を摂りすぎると高血圧や腎臓などの病気を引き起こす原因となりますので、特に注意しなければなりません。
老人が食べやすい食事、調理法
以上のように高齢者の方は必要な栄養素を含むバランスの取れた食事をとることが大切ですが、無理に食べると喉に詰まらせてしまったり、食事がストレスになってしまうリスクにつながりかねません。
そのため、食べやすくなるよう食材の特徴や種類ごとに調理を工夫することをおすすめします。
例えば、食材を一口サイズにカットする。肉は叩いて薄く延ばしたり、噛み切りにくい脂は取り除くか切り目を入れて噛みやすくします。
野菜は皮をむき長めに茹でて軟らかくします。繊維のある根菜は、繊維に対し垂直に切ると噛みやすくなります。すり身にして他の食材と混ぜ、つみれのようにするのもおすすめです。
また、飲み込みやすくするために食材をミキサーにかけて細かくしたり、料理に片栗粉などを使ってとろみをつけたりゲル剤でゼリー状にすることもおすすめです。
老人が食べやすい食品、食べにくい食品の内容
高齢者が食べやすいメニューを考える上で、食べやすい食品と食べにくい食品の情報を知っておくと良いかと思います。
<食べやすい食品>
おかゆ、パンがゆ、カレー、シチュー、スープ、肉団子、つくね、豆腐、ヨーグルト、ゼリー、アイス
<食べにくい食品>
キャベツ、レタス、ふき、ごぼう、タケノコ、はんぺん、こんにゃく、かまぼこ、ハム、海苔、酸味のある果物
老人の食事を介助する時のポイント
本来、食事は毎日の生活の中の大きな楽しみの一つです。
高齢者の方が安心して安全に、おいしく楽しく食事ができるようサポートを行うために、以下の項目を確認して食事を提供するよう心がけましょう。
意識の状態は問題ないか
食事の時にぼーっとしていると誤嚥などが起こりやすく危険です。声掛けなどをして目を覚ましてから食事にするか、日頃から生活リズムを整え決まった時間に食事をとるようにしましょう。
姿勢が曲がっていないか
正しい姿勢で食べないと誤嚥の危険や食事に集中できないといったリスクが生じやすくなります。
顎を軽く引いて少し前屈みになる姿勢が食べやすい姿勢です。テーブルの高さは腕を載せた際に肘が90度に曲がる程度がよいです。
ベッドで寝た状態で食事をする場合は、頭の下にタオルやクッションを入れて調整しましょう。
環境を整える
テレビやラジオがついたまま食事をすると集中できません。また、部屋が暗いと手元がよく見えず料理の見た目を楽しんだり、箸やスプーン等を使って自分で上手に掴むことが出来なくなります。
会話を楽しんだり適度な明るさを保ち、食事をする環境を整えましょう。
口内環境を清潔に
歯磨きはもちろん、不具合がある場合は歯医者さんで治療をして口の中をケアすることも大切です。
歯がなかったり歯周病、歯肉炎で歯茎が弱って思うように食べられないことが原因で食欲が減るケースもあります。
いつも清潔で健康的な口腔環境でいられるよう口の中を定期的にメンテナンスする習慣を付けましょう。
好みの味付けにする
高齢者は濃い味が好みになる傾向にありますが、薬味や出汁を使う等、塩分が高くなりにくくなるよう工夫をしたり、自宅での介護でレシピに悩んだり食事の用意が難しい時にはレトルトで売られている介護食を活用してみることもよいでしょう。
さまざまな種類が豊富にあり、コンビニやスーパーで取り扱っている店舗も多いためすぐに探すことができおすすめですし、希望の味付けやメニューを聞くとコミュニケーションのきっかけにもなります。
まとめ
以上のように、高齢者の食事には栄養の偏りが起こりやすく心身の健康に影響するため、調理法を工夫したり環境や口内の状況に合わせ適切な対策を行い、必要な栄養素を摂取し食事を楽しめるようにしなければなりません。
もし自宅での介護で高齢者の食事に関して不安や悩み、質問がある場合には、自治体の窓口や地域包括支援センター等で相談をしてみましょう。専門の知識をもったスタッフが必要な情報やアドバイスをくれるはずです。
また、要介護認定を受けている場合にはデイサービスを利用し、栄養バランス等を考えた食事の提供や必要な介護サービスを受けることもおすすめです。