「セルフネグレクト」を知っていますか?
育児において親が子どもの世話や養育を放棄する「ネグレクト」は、社会問題としてニュースなどの様々なメディアで取り上げられており有名ですが、逆に自らの心と体のケアを放棄する「セルフネグレクト」という言葉はまだあまり認知されていません。
このセルフネグレクト(自己放任)とは、簡単に言うと”基本的な通常の日常生活を維持するための意欲や能力を喪失し、自己の健康や安全を損なってしまう”状態のことを言い、多くの場合うつ病や統合失調症などの精神疾患や認知症などの疾患を伴います。また調査によると男性よりも女性の方が陥りやすく、集合住宅よりも戸建てに住んでいる方の方が陥る可能性が高いそうです。
「セルフネグレクト」の原因と症状
セルフネグレクトはなぜ起こるのでしょう?
「身体機能の低下、判断力の低下、経済的な貧困、社会的孤立、虐待」の5つが主な要因として挙げられます。
年齢は幅広く、若い人の場合は失恋や大切な人との別れといった理由で強いストレスを感じたり、仕事や人間関係の度重なるトラブルによって精神的なダメージを受けそれがきっかけで陥る事例が多く、次に低所得化によりお金がないということもあげられ、若年層に対しては行政も未対応で支援の制度もなく発見が遅れやすい傾向にあります。
一方で高齢者、特に配偶者との死別や家族と離れて一人暮らしをしている高齢者に急増していることも高齢化が進む日本では今、大きな問題となっています。
はっきりとした理由は覚えていない・分からない場合や、人と接する機会がなくなって引きこもりがちになったり、病気や入院に関連して症状が発生するケースもあります。また、福祉や介護の世界では度々問題となっていますが、高齢者虐待が行われ心身にダメージを受け、セルフネグレクトへとつながる場合もあります。
セルフネグレクトにより具体的にどのような症状が見られるかというと、食事や栄養をとらない、医療の拒否、不衛生な環境での生活、認知症なのに介護サービスを拒否、ケガをしているのに治療を拒否、汚れている下着や衣類の着用、失禁しても放置、入浴をしないで不潔な体で過ごす、家事や片付けの放棄etc…といったものがあり、中でもテレビでもよく取り上げられる「ゴミ屋敷」はセルフネグレクトによって表れる顕著な症状でしょう。
「ゴミ屋敷」は注目を集めるものの、周囲の人はなるべく関わらないようにしようとしがちですが、セルフネグレクトに陥ると家族や周囲から孤立して自宅に引きこもり、孤独死に至るという最悪な結果を迎えるケースも少なくなく危険な状況にあるのです。
「セルフネグレクト」に気付く、予防するために必要なこと
セルフネグレクトに陥った人は自身が困っているという自覚も薄れ、自分の意思でSOSを発信したり、誰かに助けを求めることがない為、周囲は気付きにくく事態が悪化しやすいという特徴があります。
セルフネグレクトに陥った高齢者に気付く、そして予防する為に何ができるのか。それには身近な家族や近所、近隣の地域、社会による見守り等の対策や支援が必要です。
例えば、以前より部屋が散らかっていたり、家の中や周辺にゴミを溜め込んでいないか、元気がなく外出や他人との交流を避けていなか等、前とは違う行動や行為、体調の変化を含め、注意してチェックをしましょう。
セルフネグレクトの場合、「放っておいて!」と言われることも多いですが、放置せずに地域包括支援センター等に連絡をして事情を報告し、専門家に助けを求めましょう。
認知症や精神の病気がある場合は判断する力が低下しセルフネグレクトに陥りやすいため、病院で医師に相談し診断の上、適切な治療を受けることも大切です。
介護認定を受けていれば訪問介護やデイサービスといった介護サービスを利用できますし、食事や掃除を1人で行うのは困難という場合は老人ホームのような入居型の介護施設を検討することがおすすめです。他にも家事代行サービスやボランティアの人の協力を得て生活環境を整えることも可能です。
以上のように方法はいくらでもありますので、まずは少しずつ本人の気持ちを確認しながら言葉を丁寧に聞き、今後の生活においてどんな支援が必要か情報を集めながら家族の中で考える時間を設けましょう。その後、適切な対応によりもし改善が見られても、そこで終わりにせず常に気にかけ続けることは大切なポイントです。
まとめ
上記で紹介したように、セルフネグレクトは時に命の危険にもつながる非常に深刻な問題ですが、残念なことに2022年も全国の若者から高齢者までいつどこで誰が発症してもおかしくないようなリスクを抱え続けています。
セルフネグレクトに陥りやすい、あるいは陥っている可能性がある人がいたら、決して見捨てず日頃から気にかけたり、状況によってはお住まいの役所や信頼できる人に説明し支援を求めることが大切です。
また、セルフネグレクトの予防として身体的、精神的、経済的な自立を健康なうちから意識を持って取り組み管理することも重要です。
この記事が参考なりましたら幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。