デイサービスで提供される介護サービスは、その目的の中に認知機能の向上といった認知症の予防に対する取り組みも含まれています。
既に認知症を発症されている高齢者の方でも利用できるデイサービスもありますが、病状が進行していたり、BPSDと呼ばれる行動や心理症状が見られる場合には外出や人と会うことを嫌がったり、デイサービスへの通所が難しくなるケースもよく見られます。
しかし在宅で認知症の介護を行う家族にとっても身体や精神的な負担は大きく、出来れば日中の時間だけでもデイサービス等の介護施設へ通ってくれたら安心でしょう。
そこで今回の記事では、そんな認知症の方におすすめの認知症対応型通所介護である「認知症デイサービス」について解説します。
どうぞ最後までご覧ください。
目次
認知症対応型通所介護「認知症デイサービス」とは?
認知症デイサービスとは、その名の通り認知症の患者さんを対象としたデイサービスのことで、認知症の症状がある要介護状態の高齢者の方に対し、日常生活のサポートや機能訓練を行います。
このような取り組みは、デイサービスの他に施設に入居して共同生活をするグループホームでも行われています。
一般的なデイサービスとの違いとしては、認知症の専門的なケアが受けられるという点でしょう。デイサービスの中には認知症に対応できない施設もあるため、このような認知症専門の施設があることはご家族にとっても心強いですよね。
認知症デイサービスの内容
サービスの内容は一般的なデイサービスとほぼ同じで、自宅と施設を事業所の車で送迎し、食事や入浴といった生活に必要な動作の介助、身体機能の維持、向上、改善を目指す機能訓練、職員やスタッフ、他の利用者と交流を通して心身へのさまざまな効果が期待できるレクリエーション等の活動が実施されます。
それに加えて認知症の方に特化した作業療法や体操、運動などを取り入れ、様々な介護サポートを提供します。
また、2006年に地域密着型サービスの中に位置付けられたことにより、地域と連携したサービスが提供されることも特徴となっています。
認知症の場合は特に新しい環境を拒絶する傾向が高いため、慣れ親しんだ地域で介護サービスを受けられることは大きなメリットと言えます。

認知症デイサービスの利用条件
認知症デイサービスの対象となる条件は、要介護認定において要介護1以上に認定され、認知症と診断されている方、更に通所する事業所が所在する市区町村に住んでいることです。
ただし自治体によっては、他の地区に住んでいる方も対象としている場合がありますので、希望の施設がある場合には確認をしてみて下さい。
要介護認定で要支援の認定となった場合には、「介護予防サービス」を利用することが可能で、その場合は「介護予防認知症対応通所介護」を実施しているデイサービスをご利用下さい。
認知症デイサービスの施設は3種類に分けられる
認知症デイサービスでは介護保険法により定員が”12名以下”と定められており、少人数制のためスタッフの目がよく行き届きコミュニケーションが取りやすい体制になっています。
また、施設には併設型、単独型、共用型という3種類に分けられ、それぞれの特徴は以下となります。人数や設備、雰囲気も異なりますので、利用者に合った施設を探す際の参考にされてみて下さい。
<併設型>
病院や特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などに併設されている施設
<単独型>
認知症デイサービス専用の施設
<共用型>
グループホーム内など共用スペースで介護が提供される
認知症デイサービスの職員
認知症デイサービスは認知症について精通したスタッフが揃っており、高度な知識を持った専門性の高いケアを受けることが出来ます。
特に管理者に関しては、都道府県が実施している「認知症対応型サービス事業管理者研修」を修了した者であることが義務付けられています。
通常のデイサービスではトラブルが発生してしまうような状況においても、認知症への理解が深く、利用者1人ひとりの状態や感情に合わせた適切な対応をしてもらえるため、本人はもちろん家族にとっても安心です。
認知症デイサービスの利用料金
皆様からの質問が多い認知症デイサービスの料金について紹介します。
認知症デイサービスは介護保険を利用した介護サービスになりますので、一般のデイサービスと同様に自己負担額は1割(所得によっては~3割)となっています。
また、こちらも同様に食費やおむつなど事業所の日用品を使用した場合、その費用は全額自己負担となります。
食費についてはだいたい一食あたり500円前後のところが多いですが、運営する事業所により異なりますので確認しましょう。
また、先にお伝えした認知症デイサービスの種類によっても料金は異なり、共用型ー併設型ー単独型の順番で料金が高くなる傾向にあります。
認知症デイサービスを選ぶポイント
認知症デイサービスを利用したいと思った時に、資料やホームページの案内だけで決めてしまうと、後から思っていたのと違ったと後悔する可能性もあります。
本人とご家族が納得して通うことが出来る施設を見つけるために、認知症デイサービスの選び方の流れを順に紹介していきす。
1.情報収集
インターネットや担当のケアマネジャーに相談し、通えるエリアにある認知症デイサービスの情報を集めましょう。
2.見学・一日体験に参加する
ほとんどのデイサービスでは見学や無料の一日体験を実施していますので、必ず参加しましょう。
実際に施設に行って、直接目で見て感じないと分からないことはたくさんあります。スタッフや他の利用者の雰囲気、対応、言葉遣い、衛生面、設備、食事のメニューなど、直接チェックすることが大切です。
3.比較して決める
出来れば複数の施設を見学または一日体験し、比較検討して決めることをおすすめします。
そこで決めた事業所とケアマネジャーを通して契約し、利用を開始することとなります。
不安なことや不明な点がある時は、遠慮なく事業者の窓口やケアマネジャーに相談するようにして下さいね。
この情報が皆様の介護サービス利用に役立ちますと幸いです。
認知症デイサービス比較・選択の重要ポイント
1. 専門性と個別ケアの充実度
認知症ケアの質は、スタッフの専門性と、個別ケアの実施体制によって決まります。
| 確認ポイント | 詳細 |
| 個別ケアの実施状況 | 利用者一人ひとりの生活歴、趣味、性格、認知症の症状をどこまで把握し、ケアプランに反映しているか。画一的なプログラムではなく、その人らしい活動(例:料理、畑仕事、得意な手芸など)に取り組める時間があるか。 |
| スタッフの専門性・質 | 認知症ケアに関する研修を定期的に実施しているか。利用者の混乱や拒否的な言動に対し、専門的な知識を持って冷静に対応しているか(威圧的になっていないか)。スタッフの離職率が極端に高くないか。 |
| 機能訓練の内容 | 身体的な機能訓練だけでなく、認知機能の維持・改善に焦点を当てた、その人に合ったプログラム(脳トレ、回想法、創作活動など)を提供しているか。 |
| 医療連携体制 | 看護師の配置状況や、急な体調変化・BPSD(行動・心理症状)の悪化があった際に、提携医療機関と迅速に連携できる体制が整っているか。 |
2. 環境と雰囲気の馴染みやすさ
認知症の方は環境の変化に敏感なため、「馴染める環境」であることが継続利用の鍵です。
| 確認ポイント | 詳細 |
| 定員数と環境 | 認知症対応型デイサービスは定員が12名以下と少人数制ですが、その中でも施設の広さに対し人数が多すぎないか。大人数が苦手な方の場合、より家庭的な雰囲気の施設が適しています。 |
| 施設内の雰囲気 | 職員と利用者の間に、信頼関係に基づいた穏やかな雰囲気があるか。利用者の表情が明るく、楽しそうに過ごしているか。清潔感があり、整理整頓されているか。 |
| 一日の流れ | 施設側の一方的なスケジュールではなく、利用者のペースや体調に合わせたゆとりのあるスケジュールになっているか。特に食事や入浴に時間をかけられるか。 |
| 地域とのつながり | 地域密着型サービスであるため、地域との交流(散歩、お祭りへの参加など)を大切にしているか。住み慣れた地域との繋がりを保つことは、認知症の進行予防にも有効です。 |
3. ご家族へのサポート体制
認知症介護は家族の負担も大きいため、施設が家族をどこまで支援してくれるかも重要です。
| 確認ポイント | 詳細 |
| ご家族との連携 | 送迎時などに、ご自宅での様子や体調について、丁寧かつ頻繁に情報交換をしてくれるか。送迎を担当する職員が固定されているか。 |
| 相談体制 | 認知症の症状や介護方法について、専門的な視点から家族の相談に乗ってくれるスタッフがいるか。家族の介護負担軽減(レスパイト)の役割を理解して運営しているか。 |
| 緊急時の対応 | 利用中に混乱や興奮が見られた場合など、家族への連絡体制や対応方針が明確であるか。 |
最終的な選び方:必ず体験利用をする
資料や見学だけでは分からない部分が多いため、必ず以下のステップを踏みましょう。
- 見学: 複数の施設を訪問し、スタッフの利用者への接し方、利用者の表情、施設の清掃状況などをチェック。
- 体験利用: 実際に1日または数日利用してみて、ご本人が**「嫌がらないか」「帰宅後の様子が安定しているか」**を確認する。
- ケアマネジャーへの相談: 担当のケアマネジャーに候補となる施設の情報を伝え、ご本人の状態に最も適しているか、専門的な意見を聞く。