超高齢化社会である日本。2023年の現在も依然としてその傾向は高まっています。
それにより一人暮らしをしている老人や高齢者の夫婦のみで暮らす家庭も増えており、そこにはさまざまな問題や不安が生じています。
その中の1つに「ゴミ屋敷」という問題があることをご存知でしょうか?
ゴミ屋敷については定期的にテレビのニュースやドキュメンタリー番組で取り上げられていますので、目にしたことがある人も多いかと思います。
当事者の年齢や性別はさまざまではありますが、実は高齢者の家がゴミ屋敷になっているという事例は少なくありません。
この記事を読まれている方の中にも、親が暮らす実家や近所に住む老人の家のゴミや不衛生さが気になる、という方がいらっしゃるかと思います。それはなぜなのでしょうか。
そこで今回の記事では、老人の家がゴミ屋敷になってしまう原因、ゴミ屋敷となってしまった場合の対処法、そして予防、防止するための対策について解説してまいります。
ぜひ最後までご覧いただき、参考にしていただければと思います。
目次
老人の家がゴミ屋敷になる主な原因5選
両親が暮らす実家に帰省した時に、「昔はとても几帳面で綺麗好きだったのに、年をとるにつれて片付けや掃除がされなくなってきた。」と感じたことはありませんか?
実は高齢者には部屋をゴミ屋敷にしてしまういくつかの要因があるのです。
1.気力や体力の低下
高齢により足腰が弱ったり、目や耳、筋力等の身体的な機能が衰えてきます。
若い頃と比べて掃除や物を整理するといった日常生活の動作や作業がつらくなり、頻度が減っていくこともあります。
また、散らかった部屋を片付けることは若い人でも「えい!」と気合いが必要な場合があるでしょう。しかし加齢によりそのような気力が低下し、なかなか重い腰を上げられず片付けが進まない、というケースも多いです。
2.認知機能の低下
高齢になるにつれて、身体機能だけでなく脳の認知機能も低下していきます。
認知症を発症している場合はもちろんですが、そうでなくても加齢と共に徐々に認知機能は衰えてくるもの。
ゴミをゴミなのかどうか判断出来なくなったり、捨てるべきものなのか判断できず放置してしまったりと、その場で判断して対応するということが難しくなってきます。
ゴミの収集日を忘れてしまったり、ごみの分別が分からない、ゴミ出しのルールが分からない等といった問題も出てくるでしょう。
そして結果的に「気付いたらゴミが溜まって手がつけられなくなっていた。」という状況を招いてしまうのです。
3.セルフネグレクト
「セルフネグレクト」という言葉をご存知でしょうか。
セルフネグレクトとは、「本人自身の基本ニーズ(衛生面、服飾面、食事など)を顧みない行為」、つまり実際に生活している環境や栄養状態、衛生状態が悪化しているにもかかわらず、それを改善しようとしたり周囲に助けを求めたりすることをしない状態のことを言います。
これは上記で説明したように、加齢により体力や気力、認知機能が低下により、自分の生活にとって当たり前に必要な行為(トイレでの排せつ、入浴、食事、通院など)を行わなくなってしまうことで起こることが考えられ、ゴミ屋敷化だけでなく最悪の場合は孤独死につながってしまう危険があるため注意が必要です。
4.精神疾患
認知症やアルツハイマー以外にも、うつ病や統合失調症、アルコール依存症といった疾患や発達障害(ADHD)を持っている場合にも、そうでない人と比べて家がゴミ屋敷化しやすくなります。
5.「もったいない」「捨ててはいけない」という心理
「いつか使うかも知れない」「いつか役に立つかも知れない」「壊れてもいないのに捨ててはいけない」等の考えを持っている高齢者の方は多いですよね。
戦時中や戦後の日本を経験したことも強く影響しているものと思います。
そのため、必要がないのに捨てることが出来ずため込んでしまい、家の中が物で溢れてしまいゴミ屋敷になってしまうケースもあります。
何かを収集する趣味や癖がある場合も注意です。
老人のゴミ屋敷が引き起こす問題
以上のような理由から高齢者の家がゴミ屋敷となってしまった場合、どのような問題や被害が生じてしまうのでしょうか?以下に具体的に紹介していきましょう。
1.病気、ケガ
ゴミ屋敷になると食べ物の生ごみが腐り、ダニやゴキブリなどの害虫やネズミが大量に発生します。これらの生物には病原菌を媒介するものがいる可能性が高く、それにより病気に感染してしまうリスクが高くなります。
特に高齢者は抵抗力や免疫力が低いため、より病気にかかりやすくなるでしょう。
また、カビによってアレルギーや気管支炎を招く場合や、汚れた食器などを使って食中毒の原因となることも考えられます。
物が散乱していることでつまづいて転倒し、ケガをしてしまう場合もあるでしょう。
2.火災
ゴミ屋敷で怖いのは火災の危険があることです。
コンセントにたまった埃によるトラッキング火災や、ネズミが発生し電気コードをかじられるなどして火災の危険性が非常に増えるのです。
また、それらから発火すると周りにあるゴミに燃え移り、あっという間に火の手が広がってしまうこともゴミ屋敷では大いに考えられます。
3.近隣住民とのトラブル
ゴミ屋敷はそこに住んでいる本人だけでなく、近隣住民にも被害が及びます。
上記のような害虫の発生や火災の他に、強い悪臭や周囲に散らばるゴミ等により、近くの住人の生活に支障をきたす場合や、そのエリアの価値や評判が下がるケースも考えられます。
自分たちは気にならないからと思わず、周りにも被害や迷惑をかけていることを認識して少しでも早く解決するよう行動することが重要です。
ゴミ屋敷となってしまった時の対応は?
既にゴミ屋敷となってしまった場合、本人から周囲を頼ったりヘルプを出すことは非常に難しいのが現実です。
そこで子供や家族、周囲の人、各自治体が考える必要があります。
全国の自治体ではゴミ屋敷に関する条例を出しているところが多く、その原因を踏まえて強制的な対応を取らず、まずは「支援」という形で気持ちに寄り添った対応や相談に乗ってもらえます。
自治体によってはゴミ屋敷となった原因によりゴミの処分や不用品の回収にかかる費用の負担を免除してくれるところもありますので、まずは住んでいる町の制度を確認し、利用できそうなサービスを活用することをおすすめします。
また、もし賃貸物件の場合は管理会社や大家さんに相談することも大切です。
トラブルに発展しないよう事情を説明し、必要があれば弁護士や司法書士など法律の専門家のアドバイスを受けることもおすすめです。
他に、ある程度高い費用はかかりますがゴミ屋敷の片付け、清掃を専門とした民間の清掃業者も多くあります。自分たちの手では無理な状態になってしまっている場合には思い切ってプロに依頼してしまうことも検討してみましょう。Webサイト等で情報を集めることが可能です。料金やお客様の声、どんな作業を行うかプランの内容等をチェックするとよいでしょう。
老人の家がゴミ屋敷になる前に!すぐにやるべき対策
「まだゴミ屋敷ではないし、そんなに大袈裟なことにはならないだろう・・・。」と思っている場合でも、日頃から注意しゴミ屋敷化を予防するための対策をとることは非常に大切です。
そのために周りが出来ることを以下に紹介します。
1.こまめに連絡をとる
高齢になると外出が億劫になり、他者との交流も減ってしまいがちです。
すると他人の目を気にしなくなり部屋が汚くなってしまったり、認知機能の低下が進む原因にもなります。
そこで日頃からこまめに電話をしたり、実際に訪問するようにしましょう。
人の目があることを意識させるだけでも効果はありますが、心身の変化や問題にも気付きやすくなるというメリットもありますし、一緒に掃除や片付けを手伝うことでゴミ屋敷を未然に防ぐことも出来ます。
また、家族だけでなく地域と交流する機会を増やすことも大切です。
ゴミ屋敷を予防するだけでなく、人との出会いやコミュニケーションを取ることは心の健康に大きく影響し、気力の回復や新たな生きがいを見つけるといった効果も期待できます。
悩みがある際に気軽に相談できる相手も見つけられるかも知れません。
身近な高齢者サークルや地域のイベントの参加などを促したり、地域の見守りサービスを利用する等の方法で周りとつながることを行ってみる良いでしょう。
2.介護サービスの利用
介護が必要とされる場合は介護サービスを利用することもゴミ屋敷対策になるでしょう。
人によっては上記のような交流が苦手な場合もありますが、介護サービスであれば受け入れやすいかも知れません。
介護スタッフとの交流はもちろん、自宅に訪問してもらうことでゴミ屋敷の予防になりますし、通所介護サービスであれば人との交流や機能訓練を通して身体機能の向上が期待できます。
介護保険サービスを受ける場合は要介護認定を受ける必要がありますので、ケアマネジャーや自治体の窓口、地域包括支援センターに相談して下さい。
3.ゴミの危険性や頼れる人がいることを分かってもらう
ゴミを放置することでどんな危険があるのかを伝え、本人に理解し納得してもらうことも大切です。
たかがゴミだと思われているかも知れませんが、健康やケガのリスク、周囲への被害のリスク等、ここで紹介した内容を優しく丁寧に説明してみましょう。
また、このように心配している存在がいること、頼ってもいい人がいること、手助けしてくれる人がいることも同時に伝え、困ったときに一人でためこみ辛くなる前に相談してもらえる関係作りや相談先、生活支援サービスについて分かっておいてもらうことも高齢者が安心して暮らしていく上でとても必要なことです。