デイサービスや介護の現場では近年、”娯楽”に力を入れたサービスを行う施設が増えています。娯楽は人生を楽しく充実したものにするために必要であり、それは高齢者の方にとっても非常に大切なものだと思います。しかしながら、その娯楽と介護をめぐって議論が巻き起こっているという情報もあります。
そこでこの記事では、実際に提供されている娯楽サービスの内容や、娯楽についてどのような議論がなされているのかをご紹介していきます。
目次
デイサービスでの娯楽とは?
デイサービスで提供される”娯楽”とはどのようなものがあるのでしょうか?
増加する「アミューズメント型デイサービス」
デイサービスに通うことに拒否反応のある高齢者の方は少なくありません。
新たな人間関係の輪に飛び込むことにストレスを感じたり、デイサービスでの時間を楽しいと感じられず足が遠のいてしまう方も多いようです。
そこで最近では施設側も趣向を凝らし、利用者がもっと通いたくなるような施設作りをする一環として、娯楽サービスに力を入れた「アミューズメント型デイサービス」と呼ばれる施設が増加しています。
デイサービスで提供される娯楽の種類
アミューズメント型デイサービスでは具体的にどのような娯楽が提供されているのか、主なもので言うと、
・麻雀
・カラオケ
・パチンコ
・カードゲーム(トランプ等)
といったものが挙げられます。
どちらかと言うと男性向けのサービスが多い印象で、実際に利用者の多くは男性のようです。
デイサービスでの娯楽の目的
このような娯楽サービスは、「利用者の方がデイサービスに楽しんで通い続けられるように」という目的が最も大きいものです。
通常のデイサービスで行われるレクリエーションではなかなか楽しめるものがなかったり、時には工作や脳トレゲーム等で上手くできずに自信を失ってしまうといったケースも見られます。
また、女性向けの内容のレクリエーションも多い傾向にあり、参加することに抵抗を持つ男性の利用者の方もいらっしゃいます。
そういった意味で、より男性の利用者が通いやすい雰囲気作りやサービスを行うといった目的もあります。
その他にも、楽しいと感じて通い続けることで身体機能の向上や精神的な意欲向上、娯楽を通じて利用者や職員スタッフとのコミュニケーションが増える、ゲームによる脳の活性等といった効果ももちろん娯楽サービスを実施する目的に含まれます。
デイサービスでの娯楽をめぐる問題とは?
介護を受ける高齢者の方に楽しんでもらいたいという目的で提供されている娯楽サービスですが、実はこの娯楽をめぐって様々な議論が起こっているようです。
介護サービスとして必要なのか
そもそもデイサービスとは、高齢者の方が日常生活において自立した生活が送れるよう健康維持や機能訓練、心のケア、家族など介護者の負担を軽減するといった目的があり、介護認定を受けた方が自宅からデイサービスの施設へ通って介護サービスを受ける介護保険事業の一つです。
そんな中で、デイサービスで過ごす時間のほとんどを麻雀やゲーム、パチンコといった娯楽をして過ごすことは介護保険法に基づくデイサービスの主旨からはずれているのではないか、といった問題があげられるようになりました。
実際に規制する自治体も
デイサービスでのサービスは、税金と保険料によって賄われています。
そこでこのような娯楽サービスが増えることで皆さんが負担している保険料が上がる可能性もあり、介護サービスとして適切ではないアミューズメント型デイサービスについては介護保険の対象から外す、といった規制を実際に実施している自治体も出てきています。
もちろん、高齢者の方が麻雀やパチンコといった娯楽を行うことを規制している訳ではありませんし、デイサービスに楽しんで通うことができるよう事業所が趣向を凝らすことは大切な取り組みです。
規制しているのはあくまでデイサービスにおいて娯楽(麻雀やパチンコ等)をメインに日常生活から著しく逸脱するような形で行わせたり、疑似通貨を使って遊技を行う(カジノ型デイサービスとも呼ばれます)といった場合です。
皆さんはどう思う?
この規制が当然だ、という意見がある一方で
「麻雀やパチンコなどのゲームは頭を使うため脳の活性につながり、認知症の予防になるのではないか。」
「ゲームを行う楽しによってデイサービスに通う目的ができ、生き生きとしてくる。」
「利用者の意見を聞かずに判断するのはフェアではない。」
などといった反対意見もたくさん出ています。
このような娯楽が規制されることで、高齢者の方にとっては楽しむことを規制されているような気持ちになってしまうこともあります。
規制する側にもそれなりの理由があってのことだと思いますし、簡単にどちらが正しいかというのは難しい問題です。
しかしながら、実際に利用されて楽しまれている利用者の方の声に寄り添い、どのようなサービスを提供していくべきかを真剣に考えることが必要です。
介護する側、される側、そして社会全体にとって介護サービスの改善すべき点や娯楽と介護のつながりを気持ち良く可能にする形など合わせて模索していきたいものです。