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がん患者の方に対する介護保険の適用について
デイサービスを含めた介護保険サービスというと認知症や身体の機能が低下した寝たきりの高齢者が利用するというイメージが強く、「介護保険を使えるとは思わなかった。」とおっしゃられるがん患者とその家族が非常に多くいらっしゃいます。「知っていれば自宅で最期まで介護が出来たのに・・・」というケースも少なくありません。
とはいえがん患者の方が介護保険を利用できるようになった歴史はまだ浅く、2010年に厚生労働省の通達によって在宅療養をしているがん患者の方でも介護保険を利用できるようになりました。
対象となるのは65歳以上で介護が必要な状態になった高齢者はもちろん、40~64歳の方で医療保険に加入しており、がんの症状が進行した末期状態(余命が概ね6ヶ月程度と主治医から診断された状態)の方です。
がん患者の在宅介護は介護保険と医療保険の活用が必須
がんの末期状態になった時、「最期は自宅で迎えたい」と希望される方は多くいらっしゃいます。介護保険を使うメリットとして、この願いを叶える支援になるという点があります。住み慣れた環境で在宅しながら家族と一緒に最期まで穏やかに、そして自分らしく過ごすことができるのです。しかし、実際は病院や緩和ケアの施設で迎えられる方がほとんどであり、最期まで在宅での療養を全うすることは非常に難しいのが現状です。
というのも、多くの末期がん患者は手術や抗がん剤治療などを受けた後、治療の効果が見られなくなりホスピスか在宅療養かの選択に迫られます。
治療が終了し入院していた病院から退院を求められるということは、本人はもちろん家族にとっても大きな精神的ダメージを受けることになり、これから待ち受ける病気の進行や別れに対する不安や恐怖を感じることになるでしょう。
このような状況の中で自宅での看取りを実現するためには、家族、事業所、医療とが連携し、介護保険と医療保険をフルで活用して支援していく必要があります。
がん患者もデイサービスの利用は可能
がんの末期と診断されると、医療保険と併用する形で介護保険の使用が認められます。訪問看護サービスについては介護保険から医療保険へと強制的に切り替わり、これにより週4日以上利用することも可能となります。
そして末期のがん患者でも受け入れているデイサービスもあります。
デイサービスを利用することは本人はもちろん支える家族にとっても日頃のストレスや疲労を癒したり、リフレッシュできる有意義な時間となります。
ただし、がん患者の容態は刻々と変化していくため、 状態に合わせて必要な介護サービスを提供していくことは難しくタイムリーなサービス提供がしにくいという問題もあります。できるだけ末期のがん患者や終末期の方の受け入れに力を入れた事業を行っている介護施設を選ぶと安心です。
がん患者が介護保険を利用するための申請方法
がん患者の方が介護保険を利用するには、お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターへ本人または家族が介護保険申請を行う必要があります。(地域包括支援センターや指定居宅介護支援事業者などに代行してもらうことも可能です。)
ただし申請から認定結果が通知されるまで調査などを含め通常約1ヶ月程度かかり、がん患者の場合、その間に急激に容態が悪化する可能性もあります。そこで厚生労働省から各都道府県や市区町村に対し認定の迅速化を求めており、自治体によっては申請から僅か1週間程で要介護度の結果の通知が行われるところもあるようです。
すぐに在宅介護サービスが必要な場合には、認定を受ける前であってもケアマネジャーに暫定ケアプランを作成してもらうことでサービスの利用を始めることも可能です。
いずれにしても早めに介護保険申請をすることをおすすめします。
介護保険で使える在宅サービスの種類
がん患者の方でも要介護認定を受ければ、通所介護(デイサービス)のほか、訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション、通所リハビリ(デイケア)、短期入所生活介護(ショートステイ)、福祉用具貸与、腰掛便座(ポータブルトイレ)、入浴補助用具等の特定福祉用具の購入等、介護保険を活用することでこれらのサービスを1割~3割の自己負担で利用することができます。(自己負担額は所得によって異なります。)
また、同時に訪問診療を行える在宅医を見つけておくことも重要となります。現在、訪問診療に力を入れている医療機関は増えていますが、地域によっては数が限られます。
全国在宅療養支援医協会のページや地域包括センターや病院の相談室などでも情報を入手し、24時間連絡が取れる体制で診療を行う在宅療養支援診療所などを探しておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の記事では、がん患者に向けた介護保険の制度について紹介させていただきました。
介護保険サービスの一つであるデイサービスでも末期のがん患者を受け入れている施設はあり、他の利用者と同じように食事や入浴のサポートやレクリエーション等のイベントなど、施設の介護福祉士を中心に理学療法士といった職員やスタッフ、看護師や医師がそれぞれの役割を担って連携し、みんなで患者の最期の充実した幸せな時間へとつなげるために生活の支援を行います。
自宅での看取りをご希望されている場合は、突然の容態の変化に備えて事前に介護保険申請を行い在宅介護の準備を進めておきましょう。
介護保険に関連したサービスの内容や申請の方法については、市区町村の窓口や地域包括支援センターが対応していますので、ぜひ相談してみて下さいね。