街中や病院の待合室等で、一人で何かの文句を言い続けている老人を見かけたことはありませんか?
実家の高齢になった親や介護施設で働いている人は利用者の中にも、以前は穏やかだったのに最近急に口うるさくなったな・・・と感じることもあるかも知れません。
歳をとるごとに人は頑固になるといったことはよく言われますが、高齢者の方で急に性格が変わったように独り言や文句が多くなるのは、もしかしたら認知症の初期症状かも知れません。
今回の記事では、独り言や文句が多くなることと認知症との関係や周囲の対応方法を中心に解説してまいります。
ぜひ最後までご覧いただき、病気を見逃さず適切な対処ができるよう参考にしていただければと思います。
目次
独り言、文句が増えることと認知症の関係とは
認知症の代表的な周辺症状(BPSD)、中核症状の一つに「せん妄」の発症があります。
これは、認知症になったことで以前は問題なくできていたことが自分でできなくなってしまったり、人の話が理解できない、物を覚えられない…といった場面が生活の中で増え、本人が強い不安や恐怖、孤独を感じやすくなったり、家族や回りの人の反応によってプライドや自尊心が傷つくこともあるでしょう。
その結果、身体的、心理的に強いストレスを受けて幻覚や妄想、興奮などを引き起こし独り言や文句が多く見られるようになる一種の意識精神障害のことを言います。
せん妄が原因である場合、数分から数時間、数週間にわたって症状が継続し、時間とともに症状も変化していくことが特徴です。
突然、独り言や大きな声で文句を言っている老人に遭遇するとびっくりしてしまうかと思いますが、本人は好きでそのような行動をしているわけではなく、その裏には強い孤独感や悲しみ、不安といった感情が隠れていることを理解してあげることが大切です。
認知症による独り言や文句の特徴
独り言や文句を言うことは老若男女問わず健康な人にも見られる行動ですが、認知症が原因である場合との違いはあるのでしょうか。
次は、認知症による独り言や文句の特徴について以下、紹介してまいります。
意味不明、支離滅裂な言葉が多い
認知症による独り言や文句の特徴として、状況にそぐわない文句や意味をなさない言葉の羅列があります。
意味が分からないため周囲の人々もどのように接すれば良いのか、対応すればよいのかが分からず困惑してしまうかも知れません。
ひと言二言ではなく朝から晩まで延々と続くことがある点も認知症による独り言の特徴の一つと言えます。
見えない誰かに向けて話している
明らかに一人なのに、まるで隣に人がいるかのように話している老人を見たことがありませんか?
せん妄により本人にとっては誰か幻覚が見えていることで起きており、認知症が原因であることが分かりやすい状態です。
夜間に増える
認知症による独り言や文句である場合、夜に増えたり症状が悪化する傾向があります。
日中は問題なく落ち着いて過ごせていても、夜になると急に独り言や文句を言い始めるため、気になったりうるさくて同居する家族が眠れないというケースが少なくありません。
物忘れと一緒に出る独り言、文句
たとえば何か物を探しながら独り言や文句を言っている高齢者もよくいらっしゃいます。
これは日常の中で健常者の方でもよく見られるため、おかしなことだとは感じないでしょう。
実際、たまに出るくらいであれば問題ありません。
しかし、頻繁に言っている場合は認知機能が低下している可能性が高いため、早めにかかりつけの医師や医療機関を一度受診し相談してみることをおすすめします。
認知症による老人の独り言・文句の対処法
以上のように認知症が原因で独り言や文句が出ている場合、いくらそれを指摘したりやめるように言っても本人の意思でコントロールするのは難しく、苦しんでいる可能性もあります。
周囲の人の対応によっては更に悪化して「うつ」等の二次障害につながってしまうこともあるため注意が必要で、適切な対処法を知っておくことが重要です。
感情的に怒ったり叱ったりしない
まず、認知症が原因で独り言や文句を言ってしまっている老人に対し、怒ったり無理にやめさせようとすることはやめましょう。
認知症だからわからないだろうと思ってしまうかも知れませんが、本人も自分の行動に不安を感じている場合が多いため、わざわざ間違いを指摘したり厳しく正そうとされることで余計に不安になり症状が増える可能性があります。
その症状には理由があること、認知症になっても感情があることを理解し、人として尊重することを忘れないでください。
生活を整える
夜はしっかり眠り、朝起きたら太陽の光を浴びて散歩など体を動かす、といったように、生活習慣や生活リズムを整えることは脳機能を含め心身の健康に良い影響を与え、独り言などの症状が軽減する効果も期待できます。
特に夜間に症状が現れるタイプの場合に有効です。
安心できる環境を作ろう
既に何度もお伝えしています通り、認知症により独り言や文句が出ている場合、本人もそのことを不安に思っています。
そのため、優しく手を握ったり触れてあげたり、声をかけたりと精神的なケアをし、少しでも安心感を与えてあげるようサポートしましょう。
また、夜眠る時には部屋を真っ暗にせず、間接照明等やわらかな明かりを点けたままにしてあげたり、安心して眠れるよう調整してあげることもポイントです。
老人の独り言や文句に疲弊している介護者の方へ
怒らず優しく寄り添うように・・・と頭ではわかっていても、家族や介護者だって人間です。
仕事や家事をしながらの介護で疲れ、いつも大きな負担を強いられているため、時には感情的になってしまったり、一人でストレスを抱え込んでいる方も少なくないでしょう。
他の家族や福祉センター、地域包括支援センター等の専門家に相談することをためらわないで下さい。
話すだけでも気持ちが軽くなることもありますし、外部の専門家とつながることで心強い気持ちになるかと思います。
まだ医療機関を受診していない場合は診断してもらい、必要であれば進行を抑えるための薬による治療も検討しましょう。
また、介護の負担を少しでも軽減するため、介護サービスを積極的に活用していきましょう。
認知症の方を対象としたデイサービスや介護サービスがあります。
みんなの健康的な暮らしのためにも、一人で抱え込まずに第三者を頼ることが非常に重要です。
まとめ
老人の独り言や文句は認知症の初期症状が原因である可能性があります。
意味不明な内容で幻覚や幻聴が聞こえていそうだったり、夜間に始まったり、頻繁に言うようになったら早めに医療機関を受診しましょう。
また、家では本人が安心できる環境作りや対応を心がけ、介護が疲れた時にはためらわずに第三者や施設を頼ることを忘れずに!
デイサービスやショートステイ等の介護サービスは、介護者の休養や私用による利用が可能です。
みんないつかは歳をとります。
今はまだ理解できなくても、可能な限り思いやりを持って接していけると良いですよね。
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