デイサービスや老人ホーム等、高齢者が集まる介護施設の現場ではレクリエーションがよく行われます。
このレクリエーションは脳や身体の機能を維持、向上させるためのしっかりとした目的の上で内容が考えられ実施されていますが、施設の利用者が楽しい時間を過ごすことができるように、という意味ももちろんあります。
そこで今回の記事では、デイサービスでレクリエーションが盛り上がるポイントと、得られる効果や目的別におすすめのレクの例を解説します。
レクの企画を担当するスタッフの皆様の参考になれば幸いです。
目次
レクリエーションの目的
人は高齢になるにつれ生活の中で外出や運動をする機会が減り、脳や身体機能が低下することでより運動や頭を使うことに消極的になっていく傾向にあります。
そこでレクリエーションを通してこのような状態を防止、改善していく目的があります。
身体機能、脳機能の向上
デイサービスで行うレクリエーションには手先や体、頭を使います。普段使わない部分を意識して動かすことは身体機能や脳に刺激を与えて活性化させ、介護予防や認知症の予防といった効果も期待できます。
孤独の解消、生きがいの発見
身体機能や意欲が低下し、自宅に引きこもりがちになる高齢者は孤独を感じやすく、うつや認知症の発症の要因となることがあります。
デイサービスでのレクリエーションは1人ではなく他の人と一緒に行う場面が多いため、必然的に他者と交流する機会が得られるというメリットがあり、会話をしたり笑い合ったりとコミュニケーションをとって楽しい時間を過ごすことで、自分の価値を改めて感じたり、生きがいを感じられるきっかけにもなります。
デイサービスのレクリエーションが盛り上がるポイント
準備は入念に
準備不足のまま本番を迎えると、ゲームの進行や説明が上手く出来なかったり、道具の不足などでせっかくのレクリエーションの雰囲気が悪くなったり場が盛り下がってしまう、なんていうことも起こりかねません。
可能であれば事前に職員やスタッフで一連の流れをまとめシミュレーションを行い、確認や意見交換を行うことが参加者が満足して楽しめる完成度の高いレクになるコツです。
レクを始める前の雰囲気作り
レクリエーションが盛り上がるためには、始めに参加者をリラックスさせることも大切です。
軽く体を動かしたり自己紹介をする等して楽しみやすい雰囲気を作ることが必要です。
また、これから始めるレクの内容について時間をかけてゆっくり説明する時間を設けることも重要です。参加者がきちんと理解をした上でスタートすることで、より盛り上がりやすくなるでしょう。
進行は明るく元気に
淡々と進行していては、せっかくの楽しいレクが盛り上がらず、盛り上がるには明るい進行が欠かせません。まずは進行するスタッフが楽しんでいる様子を見せることも盛り上がるポイントです。
「失敗しても良いんだ」という気持ちになってもらうためにも、最初にわざとスタッフが間違えてみたり、積極的に応援や声かけをしてみたり、レクの最中に参加者を褒めることも効果的です。
効果別!デイサービスで盛り上がる人気のレクリエーション具体例
身体機能の向上
<風船シュート>
用意するもの:風船、洗濯ばさみ(風船につけて重りにします)、新聞紙、椅子、ホワイトボード
ゲームの流れ
1.参加者を2チームに分け、先攻後攻を決めます。(参加者の数に応じてチーム数を増やしてもOK。)
2.先攻チームが輪になって椅子に座り、新聞紙を輪の中心に置きます。
3.風船を蹴る順番を決めて、最初の人の足元の床にスタッフが風船を置きます。
4.かけ声と共に風船を蹴り、新聞紙の上にのったら1点となります。
5.全員が蹴り終わったらホワイトボードに得点を記入し、次は後攻チームの番です。
6.合計の点数が多いチームの勝利です。
※参加者の身体機能や運動能力の状態に応じて、新聞紙の大きさを変えると盛り上がります。状態によっては手で投げ飛ばしするゲームに変更もOKです。新聞紙以外にも、紐などで輪を作り、そこに入れば1点など応用することも可能です。
<ピンポン玉送り>
用意するもの:ピンポンの玉、紙コップ
ゲームの流れ
1.参加者を2チームに分け、チームごとにそれぞれ円になって座ります。
2.1人1個の紙コップを渡し、スタートの合図に合わせ紙コップから紙コップへと1つのピンポン玉を送っていきます。
3.終了の合図までにより多くの人に回したチームが勝ちです。
※参加者の能力に応じて、紙コップをお玉などに変えて難易度を調整すると盛り上がります。ゴルフボールは重く落とした時に危ないので、ケガ等のリスクを防ぐためにもピンポン玉がおすすめです。
脳トレ
脳や認知機能を活性化させるレクには、指先を使った工作や手芸等の物作り、お手玉、塗り絵、折り紙など1人で行うものが主流ですが、記憶したり思い出すことを楽しむグループで行うゲーム形式もたくさんあります。
<野菜ビンゴ>
用意するもの:A4サイズの紙(各チーム1枚)、人数分の鉛筆、ホワイトボード
ゲームの流れ
1.2人1組でテーブルに横並びして座ります。
2.スタッフがホワイトボードに5×5のマス目を書き、参加者にも同じように紙に書いてもらいます。
3.書いた25個のマス目に、同じ名前が重ならないよう25種類の異なる野菜の名前を書いてもらいます。
4.スタッフが野菜の名を言いホワイトボードに書きます。その野菜が紙に書いてあれば〇をつけていきます。
5.〇が縦・横・斜めのどれか一列そろうとビンゴです。
6.40個ほど言った後、揃った列が一番多いチームの勝利です。
※野菜以外にも動物や果物、歌の名前などで応用することが出来ます。
<都道府県クイズ>
用意するもの:ホワイトボード
ゲームの流れ
1.参加者の人数に合わせてチーム分けします。個人戦でも構いません。
2.進行役のスタッフが、ヒントを一つずつ出しながらどこの都道府県についてなのかを当てる。より少ないヒントで一番早く正解したチームが1点獲得。
3.何問か行い、合計点で勝敗を決める。
※参加者の中には声が聞き取りにくい方もいますので、ヒントとなる情報をホワイトボードに大きな文字で書いて伝えるようにしましょう。
リラックス効果
以上で紹介したような、ゲームを通して身体機能、脳機能を活性化させるレクリエーションの他に、音楽を聞いたり、ストレッチや簡単な体操、手のマッサージを行ったり、絵を描いたり、動植物や地域の子どもたちと触れ合う等といったリラックスを目的としたレクもあります。
「盛り上がる」というものとは少し違いますが、参加者の中にはワイワイやることが苦手な方やこのようなゆったりと楽しめるものを好む方もいらっしゃいますので、たまに取り入れると喜ばれます。
デイサービスのレクリエーションが盛り上がるための注意点
デイサービスでのレクリエーションは勝つためのものではなく、参加者の皆さんが楽しみながら身体や脳の訓練やリハビリを行うことが目的です。
そのため、一人ひとりを尊重した内容で実施することが大切です。
ゲームのルールや内容が難しすぎて答えられない、正解できないとなると自信を失ってしまいますし、逆に簡単すぎるとバカにされていると感じる場合があります。また、あまりに競争が意識されるような進行だと、参加者同士のトラブルに発展する恐れもあります。
デイサービスのレクで行う高齢者向けのゲームは簡単なものが多いですが、出題する問題の内容や進行の方法については、相手への敬意を忘れず十分に配慮しながらお題やチーム編成を考えるよう注意しましょう。
他にも、準備の負担を減らすためにもできるだけ使用する道具が少ないもの、安全に行うために座ってできるものを中心に工夫してみましょう。