日本では高齢化社会が進む中、高齢者にとって「住む家」をどうするか、は重要な問題です。特に持ち家ではなかったり、家族で暮らしていた一戸建てやマンションを売却し、夫婦または一人暮らしとしてアパートや賃貸マンションに住み替えをする場合、高齢者が賃貸物件を借りる際に直面する問題やトラブルが増えています。しかし、適切な方法と知識を持っていれば、希望する物件を見つけやすくなります。そこで本記事では、高齢者が賃貸物件を借りる際のポイントや注意点を詳しく解説します。年齢を重ねた両親や、今は大丈夫でも、老後、自身が賃貸で部屋を借りる際に役に立つ情報ですので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。
高齢者が賃貸物件を借りにくい理由
高齢者が賃貸物件を借りる際、申し込みの段階で断られてしまったり、審査を行った結果、落ちてしまうことがよくあります。以下は考えられる主な原因です。
家賃の支払い能力に対する不安
65歳以上の高齢者の多くは仕事は退職し年金収入が主な収入源です。貸主にとっては、家賃滞納リスクを懸念する要因となる場合があります。特に、年金額が家賃支払能力に見合わないと判断された場合、契約を断られることもあります。
健康リスクへの懸念
高齢者は、病気やけが、事故、さらには孤独死などのリスクが高いと見なされることがあります。貸主はこれらのリスクによる対応費用や手続きの負担を懸念し、敬遠される傾向があります。ちなみに、売買・賃貸ともに自然死や不慮の死による孤独死の場合は、告知は不要であり事故物件の扱いにはなりません。
連帯保証人の確保の難しさ
高齢者世帯では、親族が少ない、または親族が遠方に住んでいる場合が多く、連帯保証人を用意するのが難しいことがあります。さらに、若い世代と比較して、信頼できる保証人が確保しにくいという現状があります。
これらの要因から、高齢者が賃貸物件を探す際に苦労するケースが増加しています。
高齢者が賃貸物件を借りるための具体的な方法
高齢者が賃貸物件をスムーズに借りるための方法をいくつかご紹介します。
家賃保証会社を利用する
連帯保証人を用意するのが難しい場合、家賃保証会社の利用がおすすめです。家賃保証会社とは、入居者の代わりに貸主に対して家賃を保証するサービスを提供する会社です。
<メリット>
・保証人がいなくても契約が可能。
・家主にとっても安心感が高い。
・手続きが比較的簡単。
<注意点>
・保証料(家賃の30–50%程度)を初回に支払う必要があります。
・毎年更新料が発生する場合もあります。
・収入証明書や預貯金の証明など審査が必要な場合があるため、事前に準備が必要です。
高齢者向けの賃貸物件を探す
最近では、高齢者専用の賃貸住宅や、高齢者の入居を歓迎している物件、シニア向けの物件が増えています。これらの物件は、居住する高齢者の生活や体調の変化、機能の衰えを考慮した設備やサービスが整っていることが特徴です。そのため、一般の賃貸物件と比べ暮らしの不安や心配ごとが少なく、高齢者の方が快適に住みやすい物件を見つけやすいでしょう。
<探し方>
・不動産会社で相談: 高齢者を対象として検索できる不動産会社を活用しましょう。条件を伝えることで、スムーズに探してもらえるでしょう。
・自治体や福祉団体のサポート: 地域の福祉課やシニアサポートセンターでは、高齢者向けの物件情報を提供している場合があります。特に、公営住宅や地域特有の支援制度に関する情報を入手できます。
・インターネットを活用: 「シニア賃貸」や「高齢者歓迎物件」といったキーワードで検索すると、専門サイトや高齢者向け賃貸物件を紹介するポータルサイトが見つかります。
<高齢者向け物件の特徴>
・バリアフリー設計(手すり、段差のない床など)
・緊急時の対応サービス(何かあった時の駆けつけ、24時間見守りシステム、安否確認など)
・同世代の住人が多いコミュニティ環境
福祉制度や助成金を活用する
地方自治体や国では、高齢者の住まいを支援するための制度や助成金を提供しています。これらを活用することで、金銭的な面での負担を軽減しつつ物件を確保できます。
<主な制度とその内容>
・高齢者住宅支援事業: 地域の福祉課が提供するサービスで、高齢者向け賃貸物件や補助金の案内があります。
・公営住宅の優先入居制度: 所得制限があるものの、低所得の高齢者向けに優先的に入居できる公営住宅が用意されています。
・高齢者向け家賃補助制度: 一部地域では、家賃の一部を助成する制度があります。詳細は自治体に確認が必要です。
親族や知人に協力を依頼する
信頼できる家族、親族などの身内や知人に、連帯保証人や緊急連絡先をお願いする方法もあります。最近では、親族が保証人にならずとも、緊急時の連絡先だけでも良いとする物件も増えています。
<親族や知人との連携方法>
・契約内容を共有し、具体的な役割を説明する。
・契約書に署名が必要な場合は前もって相談して同意を得ておく。
・親族が遠方の場合は、不動産会社と相談して柔軟に対応できる方法を模索する。
介護が必要な場合の選択肢
高齢者の中には、介護が必要な状況にある方もいます。この場合、通常の賃貸物件ではなく、以下のような選択肢を検討することが有効です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、介護や生活支援を受けながら生活できる賃貸物件です。
<特徴>
・安否確認や生活相談などの基本サービスが付帯。
・介護スタッフが常駐している場合もあり。
・バリアフリー設計や緊急時対応設備が整っている。
<利用の流れ>
1.サ高住を運営している不動産会社や施設を探す。
2.事前に見学し、サービス内容や費用を確認。
3.入居契約を締結。
介護付き有料老人ホーム
<特徴>
・日常的な介護サービスが提供される。
・医療機関と連携している施設も多い。
・生活支援やレクリエーションなどが充実。
<注意点>
・サ高住よりも費用が高い傾向があります。
・初期費用や月額費用の詳細を事前に確認しましょう。
・より手厚い介護を必要とする場合、介護付き有料老人ホームも選択肢に入ります。
福祉団体や自治体のサポート
介護が必要な場合、自治体や福祉団体が提供する介護支援サービスを活用することも可能です。
<主なサービス>
・訪問介護サービス: 賃貸物件に住みながら、ヘルパーによる介護を受けられます。
・福祉住宅: 介護が必要な方向けに改修された住宅を提供。
・地域包括支援センター: 高齢者の生活や介護に関する相談窓口として機能します。
契約時に注意すべきポイント
高齢者が賃貸契約を結ぶ際に注意すべきポイントを以下にまとめました。
契約内容を十分に確認する
賃貸契約書には、一般的な契約内容に加えて高齢者向けの特別条項が含まれている場合があります。具体的には、
・万が一の際の対応について: 緊急時に連絡を取る相手や手続きの流れが記載されている場合があります。
・原状回復の範囲: 通常の使用による損耗の取り扱いが明記されていることがあるため、確認が必要です。
・不明な点があれば、不動産会社や契約書の作成者に確認しましょう。また、契約時には第三者(親族や信頼できる知人)に内容をチェックしてもらうと安心です。
保険に加入する
高齢者が住む賃貸物件では、火災保険や孤独死に備えた保険の加入が求められることがあります。特に、以下のような保険を検討すると良いでしょう:
・家財保険: 火災や水漏れなどの被害に備えます。
・孤独死対応保険: 万が一の際、清掃費用や貸主への補償をカバーする保険です。
これらの保険に加入することで、自身だけでなく貸主への安心感も高まります。
バリアフリーや安全設備を確認する
高齢者が安心して暮らせるためには、物件の設備が重要です。内見時に以下のポイントを確認してください。これらの設備が整っている物件を選ぶことで、安心して暮らすことができます。
・段差の有無: 室内外の段差が少ないこと。
・手すりの設置: 廊下やトイレ、浴室に手すりが設置されているか。
・緊急呼び出しボタン: 緊急時にすぐに助けを呼べる設備があるか。
・エレベーターの有無: 高層階の場合は必須。
必要な施設との距離を確認する
家の近くや周辺にかかりつけの病院や医療機関、介護施設、スーパーなど、必要な施設があるかどうか、移動に問題ないか、駅やバス停が近いかどうか等を確認することも、日常生活を送る上で大切です。
高齢者におすすめの不動産会社
高齢者向けの物件やサービスを提供している不動産会社を利用するのも一つの方法です。以下は、そんな不動産会社の選び方を紹介します。
高齢者歓迎の不動産会社
最近では、高齢者専用のサポート体制を整えた不動産会社が増えています。これらの不動産会社は、高齢者が抱える問題を理解し、適切な物件を提案してくれます。
<特徴>
・高齢者向けの物件情報が豊富。
・保証人なしでも契約可能なプランあり。
・生活相談や地域福祉サービスとの連携。
地域密着型の不動産会社
地域密着型の不動産会社は、その地域に特化した情報やネットワークを持っています。特に、高齢者向けの自治体の制度や地元の物件に詳しいため、住みたいエリアに店舗を構えている不動産会社の方が理想の住まいを見つけられる可能性が高くなります。
<利用のメリット>
・地域の特色を活かした物件選びが可能。
・自治体の福祉支援制度を熟知している。
まとめ
以上のように高齢者が賃貸物件を借りる際は、家賃保証会社の利用や高齢者向け物件の選択、福祉制度の活用など、さまざまな方法があります。また、契約時には物件の設備や契約内容を十分に確認することが大切です。
安心して住まいを見つけるためには、信頼できる不動産会社や地域のサポートを積極的に活用しましょう。上記で紹介した情報が、高齢者の賃貸物件探しに役立ち、参考になれば幸いです。
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