「認知症の母の過食がひどい」「冷蔵庫に入れていた料理の作り置きを全部食べられてしまった」
認知症にはアルツハイマー型、レビー小体型、血管性型、前頭側頭型と4つの種類がありますが、そのさまざまな症状の中に「食べ物への異常な執着」があることことをご存知でしょうか。
認知症の方が登場するドラマ等でも、ご飯を食べたばかりなのに「夕ご飯はまだか?」と家族に尋ねる声を聞いたことがあるかと思います。
一般的に「単純にご飯を食べたことを忘れてしまったのかな?」と思われるかも知れませんが、冷静に考えると高齢者の方が普通にご飯を食べてお腹がいっぱいなはずなのにまだ食欲があるというのは不思議ですよね。
そこで今回の記事では、認知症の食べ物への執着はなぜ起こるのか、その原因や具体的な症状、対応の方法や注意点について解説します。
最後までご覧いただき、参考にしていただければと思います。
目次
認知症が食べ物へ執着する原因
認知症の人が食べ物へ執着し「過食」症状を起こす原因としては、もちろん食べた行為自体を忘れてしまうということがありますが、そもそもは記憶障害により「食べられない」ということに対して強い不安があることが考えられます。
「食べることは生きること」ですよね。つまり、食べ物へ執着するということは生への執着と言い換えることができると思います。
また、認知症になってしまうと満腹中枢の機能が低下するため、食事をしても満腹感が得られず空腹を感じて、余計に「食事をしていない」と思い込みやすい傾向にあります。
認知症の人すべてが過食の症状を持っているわけではありませんが、介護を行っている施設の職員や自宅で同居している家族の方は対応が難しいと困ってしまう場面が多いでしょう。
認知症の食べ物への執着、主な症状と特徴
それでは次に認知症の方の「食べ物への執着」に関連する具体的な症状や特徴について紹介していきましょう。
食事をしたことを忘れる
認知症の代表的な症状である記憶力の低下は、一部を忘れる”物忘れ”とは違い、体験したことを丸ごと忘れてしまうという特徴があります。
そのため、認知症の方は「食事をした」という体験を忘れてしまい、しっかり食べた後であっても食べ物を要求します。
食欲が異常にある
認知症を発症すると高齢者とは思えないほど食欲が旺盛になる場合があります。
認知機能の低下により満腹中枢への刺激が弱まり、食事をしても満足できずに過食へとつながってしまうのです。
夜中に起きて冷蔵庫や家にある食べ物を漁り、好き嫌い関係なく全部食べつくしてしまうという行動を起こすケースも少なくありません。
一時的な症状である
認知症による食べ物への執着(過食)の症状は、薬を使ったり特別な治療などをしなくても多くの場合一過性の症状であると言われています。
上記のような旺盛な食欲も一時は見られますが、段々と落ち着いてきて最終的には元に戻ります。
とはいえ症状の程度や期間は人によって異なるため、そのうち元に戻るからと放置せず症状が治まるまではしっかりと見守ることが必要です。
認知症が見せる食べ物への執着への対処法
認知症による過食が一過性だとしても、ある程度の期間続くと糖尿病や肥満などを引き起こすもとになる可能性が高くなります。
そのため、適切な対処を行い疾患の予防や防止に取り組む必要があります。
すぐに食器を片付けない
食べたあとすぐに食器を片付けてしまうと、食事をした形跡がなくなり食事の記憶も消えてしまいやすくなり、この状態で食事を要求され「もう食べたでしょ」と言っても、「騙されている!」「食事を与えてもらっていない」と思い込み、結果として更に食べ物への執着が悪化してしまうようになります。
そこで食べ終わったお皿やコップなどの食器をしばらく食卓に残してもらうことで「ご飯を食べた」という意識が残り過食を防止する効果へとつながります。
「お腹空いた」「食事はまだか」と言われても、目の前の食器を見せることで食事をしたことを納得させやすくなりますし、家族もすぐに席を立って片付けを始めるよりも、少しみんなで食後の団らんとして会話をする時間を持つことでより食事をした体験の記憶が残りやすくなるためおすすめです。
目に見える、手の届く場所に食べ物を置かないよう管理する
食べ物へ執着している状態の認知症の方は、食べ物が目に入ると食べることが我慢できなくなってしまい、備蓄用の缶詰などでも見つかると食べつくしてしまうといった問題を起こしてしまいます。
そのため家族が仕事や外出をする際は特に認知症の方の目につく場所、手に届く場所に食べ物を置かないよう気を付けましょう。
中が見えないような容器に入れたり、食べ物を保管している戸棚に鍵をかける方法もあります。
注意したいのは、隠していることを本人に気付かれると怒りにつながってしまったり、食べ物を我慢させ過ぎるとストレスが強くになり部屋の中のどこかに食品がないか探して荒らしてしまう可能性があります。
そのため、どうしても欲しがる際やおやつなどの時間にはおにぎりや果物、健康に良さそうなお菓子などを用意し、目につく場所に置いてあげると安心につながるでしょう。
また、飲み物は温かい物を用意してあげると空腹が落ち着きます。
あまりきっちりと決めるのではなく、本人の状況を見ながら対応していきましょう。
食事の量を減らし回数を増やす
認知症の過食による肥満や病気を防ぐために、1食の量を減らして食事の回数を5回や6回に増やすこともおすすめです。
1日3食にしてプラスおやつや間食をするよりも、1日の食事量を小分けにすることで総カロリーを抑えることが出来ますし、認知症の過食は空腹というよりも食べたいという気持ちを満たすことが重要なので、回数を増やすことで満足感を得られやすくなります。
本人の気晴らしを促す
何もしていないゆっくりとした時間があると、食べ物のことを考えてしまいやすくなります。
そのため、食後は簡単な家事のお手伝いをお願いしたりゲーム等をして食べ物から気をそらす時間を作ると良いでしょう。
専門家に相談する
食べ物の執着に限らず、親や家族、周囲の人などの認知症に関する心配やわからないことがある時は、地域包括支援センターや医療機関など専門の知識を持ったプロへ相談することも大切です。
認知症の介護は非常に負担が大きく、1人で抱え込むのは危険です。
認知症に関する電話相談もありますから、このようなサービスを利用して理解してくれる人に話をすることで心が楽になったり、有益な情報を得ることが出来ます。
まとめ
認知症の方の「食べ物の執着」は脳の認知機能がうまく機能しなかったり記憶力の低下によるものであり、多くの場合一過性の症状ですが、過食を続けることで別の疾患が起こり健康に悪い影響を及ぼす可能性がありますので、適切な対処やケアを行うことも大切です。
とはいえ自宅で介護をされている場合、家族に大きな負担がかかり生活に支障が出てしまうこともあります。
そんな時はデイサービスを活用いただくのもおすすめです。
デイサービスは要介護認定を受けて要介護と認定された高齢者の方に向け、入浴や食事、トイレ等の日常生活に必要な介護やサポートや機能訓練、簡単な運動やゲームを取り入れたレクリエーションといった介護サービスが提供される介護施設で、入居ではなく事業者の車で自宅と施設を送迎し日中の時間に利用します。
そして同じデイサービスでも通常とは違う認知症に特化した認知用対応型通所介護(認知症デイサービス)という、認知症の症状に対する高い知識と経験を持った専門のスタッフが介護やサポートを行う施設があります。
家族も安心して送り出すことができ負担軽減や健康管理などメリットが多く人気です。
認知症の場合知らない環境に行くことを拒否するケースも多いのですが、事前に見学や一日体験受けてもらえれば、実際のサービスの内容や進行の流れ、職員やスタッフ、他の入居者の雰囲気、食事のメニューなどを知っておくことができ入ってからの不安を軽減することができたり、施設側も受け入れや対応の準備をしておくことが出来ます。
不安な点や分かりにくいことがあれば確認し、納得した上でサービスを使うことがおすすめです。
施設を探す際は担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなどでご相談いただければ希望の条件に合った周辺の施設を紹介してもらえますので、ぜひ相談に行ってみて下さいね。