デイサービスでは食事や入浴、排泄などの生活面の介助の他に、日常生活で必要な動作を行う身体機能の維持や向上を目的とした機能訓練と呼ばれる介護サービスも提供されます。医師の指導により行う医療行為とは違い、基本、機能訓練指導員によって行われます。この記事では個別機能訓練の目的や主な内容、個別機能訓練加算についてご紹介します。
目次
デイサービスで行われる個別機能訓練の目的と主な内容
デイサービスで行われる個別機能訓練とは、どのような目的でどんなことが行われるのでしょうか?

1. 個別機能訓練の目的と特徴
目的は「生活機能の向上」
個別機能訓練の最終的な目的は、日常生活動作(ADL)や手段的日常生活動作(IADL)の改善・維持を通じて、利用者の生活の質(QOL)と自立支援を図ることです。
- ADL(日常生活動作): 食事、排泄、入浴、着替え、移動などの基本的な動作。
- IADL(手段的日常生活動作): 掃除、洗濯、買い物、調理、公共交通機関の利用などの応用的な動作。
個別訓練の3つの要素
個別機能訓練は、主に以下の3つの要素を複合的に組み合わせて行われます。
- 身体機能訓練: 筋力、柔軟性、バランス能力などの基本的な身体能力の維持・向上。
- 生活機能訓練: ADLやIADLに直結する具体的な動作の練習。
- 認知機能訓練: 認知症の予防や進行の穏やかなものにすることを目指した訓練。
2. 具体的な訓練内容の例
個別機能訓練の内容は多岐にわたりますが、利用者の**「何をできるようになりたいか」**という目標に応じて選択されます。
身体機能の維持・向上
| 訓練内容の例 | 目的・効果 |
| 歩行訓練 | 平行棒や杖を使った歩行練習、段差の上り下りなど。転倒予防に直結します。 |
| 筋力トレーニング | 椅子からの立ち座り(スクワット)、足首や膝の曲げ伸ばし(レッグエクステンション)など。移動や立ち上がりに必要な筋力を維持・強化します。 |
| 関節可動域訓練 | 体の柔軟性や痛みの軽減を目的に、専門職が関節をゆっくり動かすストレッチやマッサージ。着替えや体を洗う動作を楽にします。 |
| バランス訓練 | 片足立ち、不安定な場所での立位訓練、体操。ふらつきを抑え、転倒リスクを減らします。 |
生活機能(ADL/IADL)の獲得・維持
| 訓練内容の例 | 目的・効果 |
| 更衣訓練 | 衣服の着脱に必要な腕や肩の動きを意識した練習、特定のボタンを留める練習など。 |
| 食事動作訓練 | 箸やスプーンの細かい操作訓練、食卓での適切な姿勢の保持、**嚥下(飲み込み)**を意識した口腔体操。 |
| 入浴動作訓練 | 浴槽のまたぎ動作、シャワーの操作など、自宅での安全な入浴を目指した練習。 |
| 応用動作訓練 | 買い物に見立てた荷物の持ち運びや、洗濯物をたたむ、調理器具を扱うなど、生活に密着した動作の練習。 |
認知機能・口腔機能の維持
| 訓練内容の例 | 目的・効果 |
| 脳のトレーニング | クイズ、パズル、計算問題、簡単なゲームなど。認知症の予防・進行抑制を目的とします。 |
| 回想法 | 昔の写真や音楽などを使って過去の体験を語り合うことで、記憶の活性化や精神の安定を図ります。(特に認知症対応型デイサービスで重視されます) |
| 口腔機能向上訓練 | 舌、唇、頬を動かす体操、発声練習、唾液腺のマッサージなど。誤嚥性肺炎の予防や、食事を安全に楽しむことを目指します。 |
3. 訓練実施のポイント
- 個別での実施: 個別機能訓練は、原則として個別または5人程度の小集団で、機能訓練指導員が直接指導します。
- 居宅訪問: 訓練計画を作成する前に、機能訓練指導員が利用者の自宅を訪問し、どのような生活課題があるか(例:「トイレまでの段差がきつい」「お風呂の出入りが不安」など)を把握することが義務付けられています。
- 多職種連携: 訓練計画は、機能訓練指導員だけでなく、看護職員、介護職員、生活相談員などが共同で作成し、目標達成に向けてデイサービス全体のケアと連携します。
機能訓練指導員について
デイサービスで機能訓練の指導は誰でもできるわけではなく、指定された以下の資格のうちどれか一つ以上を持っていることが条件になります。
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・看護師、准看護師
・あん摩マッサージ指圧師
・柔道整復師
・鍼灸師(他の機能訓練指導員が在籍する施設で半年以上の実務経験が必須)
個別機能訓練加算について
機能訓練(リハビリテーション)を強化しているデイサービスというのは、個別機能訓練加算というものを取得しています。
これは、国の定める基準を満たした利用者の一人ひとりに合わせた個別機能訓練サービスを提供している場合に算定することができる介護サービスの追加料金(加算)のことを言います。
個別機能訓練加算には二種類あり、以下に説明します。
個別機能訓練加算Ⅰ
身体機能の維持、向上を目的とした個別機能訓練を主に行っている場合、個別機能訓練加算Ⅰを算定します。各条件は以下となります。
単位:1日45単位(460円の加算)
機能訓練指導員の配置:常勤、専従を1名以上配置
訓練対象者:人数制限なし
訓練実施者:制限なし(機能訓練指導員の管理下であれば、他の職員が実施しても可能)
実施回数:定めなし
個別機能訓練加算Ⅱ
生活機能の維持、向上を目的とした個別機能訓練を主に行っている場合、個別機能訓練加算Ⅱを算定します。各条件は以下となります。
単位:Ⅰ日56単位(560円の加算)
機能訓練指導員の配置:専従を1名配置(常勤でなくても可能)
訓練対象者:個別、または5人以下の集団
訓練実施者:機能訓練指導員が直接実施すること
実施回数:週1回以上実施すること
※ⅠとⅡの大きな違いは、機能訓練指導員の配置と訓練対象者の人数、そして実施回数の三つです。
まとめ
デイサービスでは身体機能、生活機能の維持、向上に向けた機能訓練を受けることが出来ます。
それには”機能訓練指導員”という専門の資格を持ったスタッフが対応する為、安心して受けることが可能です。
訓練内容によっては個別で受けたり複数の人と一緒に受けることが出来ます。
身体機能や生活機能が向上すると、生活がしやすく自分の力を感じられ、精神の健康にも繋がります。
心身共に健康に生活する為にも、ぜひ機能訓練を活用下さい。
詳しい情報については事業所やお住まいの地域の役所で資料や概要を確認をしていただいたり、質問や相談がある際は担当のケアマネジャーにぜひお伝え下さい。