認知症と「独り言」の関係は?周囲の理解の重要性と適切な対処法を解説

認知症の症状として見られる「独り言」について、「うるさい」「どう対応したら良いのかわからない」といった声がよく聞かれます。そこで今回の記事では、認知症の独り言について悩まれている皆様に向け、認知症と独り言の関係や原因、そして周囲ができる対応方法について詳しく解説します。

認知症と加齢による物忘れとの違い

人は誰もが年をとるにつれて記憶力が低下し、物忘れをするようになっていきます。

例えば、昨日食べたものを思い出せなかったり、どこに物を置いたか忘れてしまったりする等。

加齢による物忘れの場合、行動そのものを忘れるのではなく、体験の一部を忘れたり思い出すまでに時間がかかる傾向があります。

一方で認知症は行動や体験そのものを忘れてしまうという特徴があります。

食事したこと自体を忘れてしまう。何度も通った道が分からなくなり家に帰れなくなる。何度も使っていた物の使い方が分からなくなる等。

認知症は早期発見、治療が大切と言われていますので、家族などが「少しおかしいな」と感じたら状態が悪化する前に、早めに専門医や専門のクリニックを受診させてあげることが重要です。

認知症の「独り言」の原因とは?

認知症の方が独り言を頻繁に話す場合、脳の機能の変化が関係していることが多いです。以下にその原因となる主な理由を紹介します。

不安や孤独感からの自己表現

認知症の方は記憶や判断力、認知機能が低下するため、周囲とのコミュニケーションが上手にできなくなり、不安感や孤独感が増すことがあります。そのため、独り言によって自分を落ち着かせたり、感情を表現しようとするケースが多くあります。

思考の整理

認知症の進行により思考が混乱し、頭の中で考えたことを言葉に出して整理することがあります。自分への確認や思考の整理を目的として、独り言を使うケースもあります。

記憶力の低下

認知症は記憶力に大きな影響を与えます。思い出したことを繰り返し話すことで、記憶を保持しようとする意図が見られることがあります。例えば、「今日は病院に行く」といった単純なことでも、繰り返し口に出すことで忘れないようにするのです。

幻覚や錯覚の影響

疾患が悪化して中等度から重度の認知症になると、幻覚や錯覚、妄想を経験することがあります。これらの幻覚体験によって、見えない人や物と会話をしているかのように独り言が出るケースもあります。本人にとっては「話し相手」が見えており、独り言という意識は少ないでしょう。

認知症の独り言に周囲が悩む理由

独り言は一般的には問題になりませんが、認知症の方の独り言には特有の問題点があり、家族や介護者にとって負担に感じられることも少なくありません。

頻度や声の大きさ

認知症の方の独り言は、その頻度や声の大きさから家族に「うるさい」と感じさせることがあります。 特に、夜間や静かな環境で大きな声の独り言が続くと、家族や周囲の生活リズムが崩れやすく、睡眠不足などの二次的な問題につながることもあります。

内容の繰り返し

同じ内容の独り言や意味のわからない独り言が繰り返し起こることで、聞いている方のストレスとなり同居する家族は対応に疲れてしまう事があります。

周囲の不安やストレスの増大

認知症の独り言は、しばしば否定的な言葉や自責の言葉が含まれることがあり、周囲にとって心理的負荷がある場合もあります。また、独り言に介入しても会話が成立しないことも多いため、家族が「どう対応すべきかわからない」という不安感に耐えることも少なくありません。

認知症の「独り言」への具体的な対処法

独り言が頻繁な場合、単純に「うるさい」と感じるだけでなく、どのように対処すればよいのかを知ることが重要です。ここでは認知症の方の独り言に対する主な対処法を紹介します。

落ち着ける環境を提供する

認知症の方が不安やストレスを感じていることが独り言の一因である場合、穏やかで落ち着く環境を提供することが重要です。部屋の中でリラックスできる音楽を流したり、自宅に本人が好きなものや安心できるアイテムを用意することで、不安が和らぎ、独り言が落ち着く場合があります。

穏やかに見守る

認知症の方の独り言に対してすぐに否定や注意をするのではなく、穏やかに見守ることも効果的です。無理にやめさせようとするよりも、自然に任せて見守ることで症状が落ちついてくることがあります。

安心感を伝える会話を行う

認知症の方の独り言には、不安や記憶障害が背景にあるため、適切な声かけによって安心感を大切にすることが大切です。例えば、「大丈夫だよ」「私はそばにいるよ」など、手を握ったり、優しく安心できる言葉を言ってあげることで、不安が軽減し独り言が落ち着いてくる可能性があります。

独り言のタイミングやパターンを理解する

独り言が多い時間帯や状況がある場合、それを認識して対応策を考えることも有効です。例えば、夕方や夜に独り言が多い場合、昼間の活動量を増やして日中に疲労感を高めるなど、リズムを調整することで夜中の独り言を抑えられる可能性があります。

専門家への相談

もし独り言が日常生活に支障をきたすほど頻繁に、内容が長時間に否定的だったりする場合は、医師などの医療機関やケアマネージャー、認知症専門の相談窓口に相談することが推奨されます。診断を受け専門家の指導を受けることで、認知症に適した対応策やサポートを受けられることが多いため、悩みや困っていることがある際は一人で抱え込まず、専門家への相談や適切な支援を積極的に利用しましょう。

また、現在は認知症に使える薬もいくつかの種類が認可されています。症状を劇的に改善させたり、完全に進行を止めることはできませんが、脳の神経細胞を活性化させ、イライラや不安を軽減させて独り言の症状に対しても効果が期待できる可能性がありますので、医師に相談してみましょう。

認知症の独り言は周囲の理解が重要

独り言を発する認知症の方への対応には、周囲の理解と忍耐が必要です。 独り言の背景には認知症による不安感や記憶の低下があるため、「うるさい」と感じるだけでなく、その原因に寄り添うことで本人の気持ちが落ち着く可能性もあります。

特に、家族や介護者など誰か理解してくれる人が近くにいることで認知症の進行を抑えたり、QOL(生活の質)を向上させることにもつながります。視点でとらえ、正しいケアを続けることが大切です。

まとめ

以上のように認知症の方が言う独り言には、思考の整理や不安の解消といった目的があり、日常生活の一部として受け入れる必要があります。安心感を考慮して対応することで、周囲の負担も軽減できる可能性があります。

独り言が頻繁な場合は、原因を捉えた上で、環境の整備や専門家への相談など、柔軟な対応を心がけることが重要です。認知症ケアは日々の積み重ねが大切であり、家族や介護当事者が一緒に成長していくことで、認知症の方にとっても快適な生活が提供できるでしょう。

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