近年、高齢者を狙った特殊詐欺が全国で増加しています。警察庁や警視庁の最新データによれば、被害者の65歳以上が多くを占めており、被害額も深刻です。オレオレ詐欺や振り込め詐欺、電話やメール、SNSを使った巧妙な手口が日々進化しており、その内容や方法も多様化していて家族にとっては非常に心配ですよね。
本記事では、なぜ高齢者がターゲットにされるのか、その理由や心理的背景、実際の事例を交えながら、防止のための有効な対策を詳しく解説します。
目次
なぜ高齢者が詐欺被害に遭いやすいのか?
まずは高齢者が詐欺被害に遭いやすい主な原因について紹介します。
判断力・記憶力の低下
高齢になると、判断力や記憶力の機能が低下しやすくなります。詐欺犯人は、こうした変化を的確に利用し、混乱させた上でお金をだまし取る手口を使います。
家族との連絡頻度が少ない
家族や周囲とのコミュニケーションが少なくなると、自宅での電話や訪問を信じやすくなります。犯人はそれを逆手に取り、「本人が事故に遭った」「会社の金を使ってしまった」などの嘘で不安を煽ります。
安心を求める心理
高齢者の多くは「困っている人を助けたい」という思いが強く、声を聞くだけで「家族だ」と判断してしまうケースもあります。これがオレオレ詐欺の心理的な根幹です。
特殊詐欺の主な手口とその特徴
次に、特殊詐欺の中でも現在よく行われている詐欺の手口について、簡単に紹介します。
| 手口 | 内容 | 使われる手段 |
| オレオレ詐欺 | 家族を装って金を要求 | 電話 |
| 架空請求詐欺 | 利用していないサービスの請求 | メール・SNS |
| 還付金詐欺 | ATMでの還付金手続きを装う | 電話 |
| キャッシュカード詐欺盗 | 職員を装ってカードを奪う | 自宅訪問 |
| 投資詐欺 | 「必ず儲かる」と騙す | メール・サイト等 |
犯人は電話番号を偽装し、公的機関や大手会社の職員を名乗ることがあり、見抜くのが困難です。

実際に発生した詐欺事件の事例
・東京都在住の女性(78歳)が、「息子が会社の金を使ってしまった」との電話を受け、預貯金300万円を手渡し。
・大阪府の男性(82歳)が「裁判になる前に解決金が必要」と言われ、ATMで送金。実は全て偽の話だったというケース。
このように、高齢者がだまされる理由には、「相手を信じてしまう」「判断力が鈍っている」「自分が騙されているとは思わない」などの傾向があります。
詐欺に遭わないための有効な対策
電話でのやり取りは必ず確認
・知らない電話番号からの連絡には出ない。
・「家族」や「会社関係者」だと言われても、一度切って自分で確認。
・声だけで判断しないことが重要。
家族や知人と日頃から連絡を取り合う
・定期的に家族と連絡を取り、「困ったときは誰に連絡すべきか」を話し合う。
・「本人確認の合言葉」などを決めておくのも有効です。
怪しい連絡は警察や相談窓口に連絡
・警視庁や各都道府県の警察では無料の相談窓口を設置。
・詐欺被害を未然に防ぐためには、「怪しい」と感じた時点での相談がカギ。
特殊詐欺対策のための具体的な方法
・留守番電話機能付きの電話機を設置。
・非通知拒否設定を行う。
・怪しいサイトやSNSから届いたメッセージは絶対に開かない。
・口座番号や暗証番号などの個人情報は絶対に伝えない。
相談先とサポート窓口一覧
| 機関名 | 内容 | 連絡先 |
| 警察相談専用電話(#9110) | 詐欺被害の相談 | #9110 |
| 消費者ホットライン | 詐欺に関する一般相談 | 188(いやや!) |
| 各市区町村の福祉課 | 高齢者見守りサポート | 地域ごとに異なる |
| 法テラス | 法律的手続きのサポート | 0570-078374 |
これらの窓口を活用することで、不安な時にも安心して相談が可能です。
高齢者を守るために、今私たちにできること
高齢者自身だけでなく、家族や周囲の人が意識を持つことが非常に重要です。たとえば、
・「最近、怪しい電話が増えてない?」と声をかける。
・操作が不安な高齢者には、ATMの使い方やSNSの設定方法を一緒に確認。
・情報をシェアし、地域全体で被害を防止する意識を持つ。
高齢者の特殊詐欺被害を防ぐために、地域社会が果たす役割
1. タイムリーな情報伝達と注意喚起
詐欺は手口が巧妙かつ地域集中型で発生するため、迅速な情報共有が水際対策の鍵となります。
- 「アポ電」の即時共有:
- 地域内で特殊詐欺の**「アポ電」(予兆電話)が発生した際、その情報をすぐに民生委員、自治会、老人クラブ、地域包括支援センター**などの見守りネットワークを通じて地域住民(特に高齢者世帯)に迅速に共有します。
- 広報誌、回覧板、メール配信サービス(防犯ネット)、SNSなど、複数の手段を活用して情報を「タイムリー」に届けます。
- 最新の手口の周知徹底:
- 地域での集会や老人クラブの活動時などに、警察や消費生活センターの専門家を招き、現在流行している詐欺の手口(還付金詐欺、オレオレ詐欺、架空請求など)を具体的に説明する出前講座を開催します。
2. 物理的・人的な「見守り」体制の強化
高齢者を詐欺の魔の手から守る「最後の砦」として、地域住民や事業者が連携します。
- 連携による「声かけ」の仕組み:
- 金融機関、コンビニエンスストア、郵便局などの職員と警察、自治体が連携し、高額な現金の引き出しや電子マネーの購入に慣れない高齢者に対し、積極的に声かけを行い、詐欺ではないかを確認するマニュアルや訓練を徹底します。
- 宅配業者、新聞配達員、検針員など、日常的に高齢者宅を訪問する事業者と連携協定を結び、異変や不審な様子(例:電話機の横に「だまされたふり作戦」のメモがある、高額な商品が急に増えたなど)に気づいたら通報する**「ながら見守り」**の仕組みを構築します。
- 防犯機器の普及支援:
- 迷惑電話対策機能(自動録音、着信拒否など)が付いた電話機や機器の購入費用の一部を自治体が助成するなど、物理的な対策をサポートします。
3. 実体験を通じた啓発と抵抗力(レジリエンス)の向上
知識として知っているだけでなく、実際に「だまされる恐怖」を疑似体験させることが重要です。
- 防犯寸劇・ロールプレイング:
- 老人クラブや地域のボランティアが、実際の詐欺の手口を再現する寸劇(防犯演劇)を披露します。高齢者自身が犯人役や被害者役を演じるロールプレイングは、詐欺への心理的な抵抗力を高めるのに非常に効果的です。
- AIツールを活用した訓練(先進事例):
- 自治体によっては、生成AIを用いて特殊詐欺の犯人役を再現し、高齢者が実際に会話を体験することで、冷静な判断ができるように訓練するAIシミュレーションツールを導入しています。
- 家族間の連携強化:
- 高齢者本人だけでなく、離れて暮らす子どもや孫世代に向けた啓発活動も行い、「いざという時は電話で相談する」という家族のルールづくりを促します。
まとめ:特殊詐欺は「誰でも」「どこでも」遭う可能性がある
以上のように、「自分は大丈夫」と思っていても、詐欺のターゲットはあなたのすぐ近くにまで来ています。特に高齢者は、心理的にも詐欺犯人の格好の的です。そのため、現在の状況や手口を正しく知り、防ぐための行動を具体的に取ることが大切です。
本記事が、少しでも多くの人に詐欺に対する意識を高めてもらい、被害者を減らす一助となれば幸いです。
このサイトでは、高齢者に関係する問題や暮らしを快適にするコツ、介護サービス等に関連する役立つ情報を発信しています。気になる内容の記事がありましたら、ぜひ合わせてご覧下さいませ。