「高齢の親の浪費癖がひどく困っている」
これは高齢者のご家族から相談を寄せられる悩みの1つで、実は高齢者の金銭トラブルは非常に多い事案となっています。
必要のない商品を大量に買ってきてしまったり、必要以上にお金を使ってしまうといったことが増えると心配になってしまいますよね。
お金に関する問題はデリケートであるものの、周囲への被害も大きいため放置するわけにはいきません。
そこで今回の記事では、老人の浪費癖の原因と対策のポイント、注意点について解説してまいります。
どうぞ最後までご覧にいただき、皆様の参考になればと思います。
目次
浪費癖とは
そもそも浪費癖とはどのような状態のことを言うのでしょうか。
一般的にはお金を無駄使いすることを指しますが、時に金銭だけでなく体力や時間、物を無駄に使うことを指す場合もあります。
計画性なくお金を使ってしまう、使ってもいい限度を超えてもお金を使ってしまう人は、浪費癖があると言えます。
老人の浪費癖とは
一般的な浪費癖の原因は「心理的な欲求不満」と言われており、買い物などで自分を満たすことが癖となり、不満を感じる度にお金を使い続けてしまいます。
お金を使って満たされる効果は一時的なものですから、いくらお金があっても足りず衝動買いを繰り返します。
自分が本当は何に悩んでいるのか、何を思っているのかを見ないよう「浪費」という本当の欲求とは違う方法で誤魔化しているため、本人が気付きにくく早期発見できるケースが少ないというのも特徴で、ストレス発散や見栄っ張りな性格によりお金を使うことも、ここに当てはまるでしょう。
一方で老人の浪費癖の場合、こういった原因のほか、主に以下の理由が考えられます。
・昔から浪費癖がある
・会社で働いていた頃、給料があった頃と感覚が変わらずお金を使ってしまう
・認知症を発症している
若い頃から浪費癖があり、高齢になっても変わることなく浪費しているケース。収入や経済状況が変わったにも関わらず、昔の感覚のまま支出してしまうケース。そして認知症の症状により浪費癖になってしまったケースです。
特に認知症の場合、認知機能の低下による記憶障害や判断力の低下で金銭管理や欲求へのコントロールが出来なくなり、貯金や年金、老後のための資金などを使い果たしてしまうことが少なくありません。そしてお金がなくなることで不安が強くなり更にお金に執着してしまうのです。
老人の浪費癖で起こり得る問題
老人の浪費癖はさまざまな問題を引き起こします。
悪徳商法や詐欺被害
高齢者が訪問販売や電話勧誘などの手法を使った悪徳商法や架空請求により被害にあうニュースを皆さんも一度は見たり耳にしたことがあるかと思います。
特に浪費癖がある方の場合簡単にローンの契約や商品の購入をしてしまいやすくなる傾向にあり、家族が知らないうちにトラブルに巻き込まれるケースが多くあります。
被害妄想と執着
認知症の方によく見られる症状の1つに、「お金を盗まれた」と思い込んでしまう妄想があります。
普段介護やお世話をしている家族やヘルパーさんなどが疑われ暴言を吐かれることがよくあり、揉めてしまうことも少なくなく周囲にとってもつらい症状ですよね。
また、必要がない場面でもお金や財布を持っていないと強い不安を感じてしまうということもあります。
家族への負担
心理的な負担だけでなく、実際に借金をしてしまったり、介護や医療で支払いが必要な費用が足りなく払えなくなってしまった場合には家族が立て替えなければならなくなるケースもあります。
その結果、家計がひっ迫し生活に支障をきたす可能性もあるでしょう。
また、家族が立て替えられなくなり、本人が必要な医療や介護保険のサービスを受けられないといった問題も起こります。
老人の浪費癖の対策
それでは、浪費癖の高齢者のお金を管理するための対応方法についてご紹介していきましょう。
外出時に同行する
買い物を1人でしないよう外出する際には同行し、高額な買い物や不要な買い物でお金を使わせないようにします。
その際、本人が気を悪くしないよう「同じ物が家にたくさんあったよ。」「あっちの方が安いよ。」など優しく伝えるようにしましょう。
お金の管理者を決める
次に家族や親族間で話し合いを行い、誰がどこでお金を管理するかを決めておきます。
一人でまとめて財産の管理する以外にも、何人かで割合を決めたり、貯蓄や年金など毎月入ってくるお金、支払い等に分けてそれぞれで管理者を決めるのも良いでしょう。
先述したように、認知症の場合はお金を盗まれたと思い込んだり、お金を誰かに管理されることを嫌がられる可能性も高いのですが、その負担が強い場合には「家族信託・民事信託」と言う信託契約を結び法的に家族(等、信頼できる人)が管理を行えるようになる手法もあります。
日常生活支援事業を活用する
認知症などにより判断能力が低下した人の生活を全面的に支援するための制度として「日常生活支援事業」というものがあります。
生活支援員やホームヘルパーが生活に必要なさまざまなサポートを行ってくれ、その中に日常生活における消費契約も含まれます。
1回あたり1,200円程の費用がかかりますが、家族の同行や管理が難しい時に活用してみるのをおすすめします。
成年後見制度を利用する
認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な人を守るため、契約や手続きをサポートしてくれる制度です。
子どもたちが全員、実家から離れて暮らしていて父や母の近くで管理することが難しい場合などに利用されますが、利用には注意も必要です。
本人に判断能力があるうちであれば、事前に後見人になる人を決められる「任意後見」が使えますが、既に判断能力が不十分な場合は家庭裁判所によって後見人が選任される「法定後見」が適用されるため、家族以外の弁護士や司法書士等が選ばれる可能性があります。その際は異議申し立てや家族の意向による交代が出来なかったり、後見人に報酬を払う必要がある等いくつかの注意しなければならないこともありますので、利用する前にしっかりと成年後見制度に関連する情報をサイトで検索したり専門家の話を聞くなどして調べてから利用するようにしましょう。
老人の浪費癖でやってはいけないこと
浪費があるからといって無理に財布や通帳を取り上げることはやめましょう。
先述しているように、浪費癖のある高齢者はお金に執着している可能性が高く、お金がないことへの不安やストレスはかなり大きいですし、人からお金を取り上げられることで自尊心が傷つけられ、取り上げた人に対して強い不信感を抱き更に遠ざけようとしてしまい失敗に終わってしまうでしょう。
そのため、本人に分かりやすく丁寧に説明しながら、無理矢理ではなく少しでも納得してもらえる形で管理させてもらえるよう努めましょう。