「老老介護」という言葉をご存知でしょうか?
年々高齢化が進むここ日本では、子の数が減って老老介護の世帯が増加し、今や深刻な問題となっています。
しかしあまり認知されていないこの問題。
今回の記事では老老介護の概要や問題点、老老介護が起こる理由、そして解決策について解説します。皆様の参考になれば嬉しいです。
老老介護の問題を解決する為には人の力を借りる事をためらわないで
老老介護は現在、在宅介護の約6割を占めていると厚生労働省より発表されています。
高齢の夫婦間で介護を行っているケースが多く、家庭の中の問題として外には知らせないまま事態が悪化してしまうといった事をよく耳にします。
また、年齢が高くなるにつれて情報が掲載されているサイトを見ることも難しいですし、介護についての役立つ情報を探したり聞きに行くのが面倒という方も少なくありません。
しかし共倒れを防ぐためにはもっと積極的に人を頼り、双方の負担を減らしより快適な生活を送る為のケアを受けることが必要です。
老老介護とは?
老老介護とは読んで字のごとく、高齢者が高齢者の介護を行うことを指します。
2019年の国民生活基礎調査によると、主な介護者は同居している配偶者や親、子、兄弟等で、それぞれが65歳以上の高齢者です。
似たような問題で認認介護というものもあり、老老介護との違いは高齢の認知症患者の介護を同じく認知症の高齢者が行うことを意味します。
認認介護では自身で介護や看護の必要性がわからなかったり、介護をする中で転倒などの事故につながりやすく大きなリスクが伴う為、注意が必要です。
老老介護の問題
老老介護で問題となるのはやはり「共倒れ」でしょう。
介護には体力が必要です。それを高齢者が行うとなると身体にも精神にも負担が大きすぎます。
介護が大変で周りの人との交流する余裕がなく、外出する機会も減り、家に引きこもりがちになって介護をする側が毎日続く介護の中で一人で悩みを抱え込んだり、意欲が低下しうつや認知症を発症してしまう事もあります。
特に介護が必要な高齢者は認知症を発症しているケースも多く、暴言や暴力、夜の徘徊等と言った症状が出ることがある為、更に負担が増えてしまいその結果、虐待をしてしまったり、体調が悪化して限界となり二人とも共倒れとなる可能性が高くなります。
また、介護者が夫、介護される側が妻の場合、それまで家事は女性に任せきりという男性が多い世代ですので、介護以外に日常の食事の準備や洗濯、掃除といった家事、お金や薬の管理といった事も難しいという問題が起こり得ます。
老老介護を引き起こす原因
老老介護の一番の原因は平均寿命が延びていることでしょう。そしてその分、介護が必要になる期間も長くなるのです。
厚生労働省の調査によると日本人の平均寿命は男性が約82歳、女性が約87歳。日常生活を自立して送れる健康寿命は男性約73歳、女性75歳となっています。
つまり男性で約9年、女性で約12年という長い期間、介護が必要となる可能性が高いのです。
今後も平均寿命は延び続け、2025年には男性83.85歳、女性89.44歳と予測されています。
また、その中で子供とは別で夫婦だけで暮らす家庭が増え、全体と比較して核家族世帯が37.9%、単独世帯が29.0%という割合になっています。そのため老老介護をせざるを得ない状況となっているのです。
老老介護を解決する方法
この老老介護を解決するにはどのような方法があるのでしょうか。その対策として考えられる主なものを以下にご紹介します。
まずは相談することが大切
他人に相談をせず、助けを求めずに一人で抱え込まれる高齢者の方がとても多いのですが、とにかくまずは家族や親族や友人、地域の人等、誰かに相談をして下さい。
自分が今どんな事に困っているのか、どういう状況なのか、という事を人に知らせることは何も恥ずかしいことではありません。
誰に相談したら良いのか分からない場合、地域包括支援センターへ相談することもおすすめです。地域包括支援センターは高齢者の暮らしをサポートする介護の相談窓口で、アドバイスを受けたり、さまざまなサービスに繋げてもらうことが出来ます。専門家と話しをし適切なアドバイスを受けることで希望が生まれ、不安やストレスを減らす効果も期待できます。
介護サービス、介護施設を利用する
受けられるサービスについての知識や情報を知らない高齢者の方も多くいらっしゃいます。
日本では地域包括ケアシステムという体制を整えており、要介護となっても介護保険制度だけでなく医療保険制度も含め高齢者を地域で支え支援していく、という方針でさまざまサービスを提供し対応しています。
自宅にホームヘルパーが訪問してくれる在宅サービス(訪問看護や訪問介護)、施設と自宅までの送迎付きで通い介護サービスを受けることが出来る通所介護(デイサービスやデイケア)等があり、他にも短期間の宿泊が可能なショートステイを組み合わせることも出来ます。
これらの介護サービスを日中の時間だけでも利用することが出来れば介護をする方の負担軽減になりますし、介護をされる側も食事や入浴、排泄といった日常生活で必要な介助を受けることが出来る他に、レクリエーションへの参加や運動、リハビリなど体の機能や健康を維持、向上介護の予防を目的とした訓練を受けたり、他の利用者、施設のスタッフ等と交流する機会が得られるというメリットもあります。また、介護のプロに任せることで安心感もありますよね。
介護サービスを利用するには要介護認定を受け、ケアプランを作成してもらう必要がありますので、暮らしている地域の自治体のケアマネジャーに相談をし、申請を行いましょう。
認定の流れや審査の内容、手続きについて分からないこともしっかり説明とサポートしてくれますので、安心して気軽に相談をしてみて下さいね。
施設へ入居する
施設へ入所させるのは可哀想だし高いお金がかかる、と思われる方も多いと思います。しかしお互いが安全な暮らしをするための前向きな選択の一つとして検討することも必要です。
かかる費用などの経済面や病状などの状態に合わせた適切な施設を選ぶために、まずは入居相談から始めると良いでしょう。
施設といってもさまざまな種類があり、有料老人ホーム、老人ホーム、グループホーム、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、サービス付き高齢者向け住宅etc…
こちらも入所する条件など複雑で分かりにくい部分がありますから、探す際には先にあげた地域包括支援センターを活用したり施設を運営する事業者に相談をしましょう。
また、契約をする前に必ず資料請求と見学の予約をして直接自分の目で施設を見てもらい、過ごす環境や使う設備、職員や利用者の雰囲気などをチェックして、不明な点は質問をして納得してから選ばれると、いざ通う際に不安が少なくなります。
老々介護を防ぐために出来る地域活動
介護予防・フレイル予防を目的とした活動(自助の支援)
要介護状態になることを遅らせたり、防いだりすることが、結果として老々介護の開始時期を遅らせ、期間を短縮することにつながります。
- 住民主体の「通いの場」の運営
- 例: 地域会館や集会所で、住民が主体となって行う体操教室(軽体操、ヨガ、太極拳など)、ウォーキング活動。
- 効果: 運動機能の維持・向上だけでなく、高齢者同士の社会参加を促し、孤立を防ぎます。
- 栄養改善・口腔機能向上のための活動
- 例: 栄養士などを招いた料理教室(高齢者が食べやすいレシピ)、地域の共食の場としての**「会食サービス」や「ふれあいカフェ」**の運営。
- 効果: 栄養状態の改善は体力・免疫力の維持に直結し、介護予防の重要な要素です。
- 認知症予防・生きがいづくりの活動
- 例: 趣味活動(手芸、園芸、麻雀、囲碁)、地域の子どもたちや若い世代との交流イベント。
- 効果: 脳の活性化と「役割」や「生きがい」を見つけることで、心身の健康を保ちます。
日常生活の「ちょっとした困りごと」を支える活動(互助の推進)
専門的な介護サービスに至らない、日常生活の細かな負担を地域住民同士で支え合うことで、介護者の負担を軽減します。
- 生活支援ボランティアの育成・活用
- 例: 買い物代行、病院への付き添い、簡単な掃除、ゴミ出しなど、短時間で終わる支援を有償・無償のボランティアが行う仕組み。
- 効果: 介護者が自分の時間(休息や通院、趣味の時間など)を確保でき、「共倒れ」を防げます。
- 地域デリバリーや配食サービス
- 例: 地域の飲食店やNPOなどが協力し、高齢者宅に食事を届けるサービス。
- 効果: 食事の準備という大きな負担を軽減し、栄養バランスの偏りを防ぎます。
孤立を防ぎ、SOSを早期に発見する活動(見守りネットワーク)
老々介護の当事者が地域から孤立することを防ぎ、介護者の体調不良や限界サインを早期に発見して専門機関につなぐことが重要です。
- 多職種・多機関による見守りネットワーク
- 例: 民生委員、自治会、社会福祉協議会、地域の警察・消防、郵便局、新聞配達、電力・ガス会社など、様々な関係者が連携し、異変に気づいた際の連絡ルートを確立する。
- 効果: 孤立している世帯を早期に発見し、必要な支援(介護サービスや専門相談)へつなぐことができます。
- 積極的な声かけ・安否確認活動
- 例: **「愛の一声運動」**など、近隣住民やボランティアが定期的に高齢者宅を訪問したり、電話で声をかけたりする活動。
- 効果: **「見られている安心感」**を提供し、困りごとを気軽に相談できる関係性を構築します。
まとめ
老老介護は現在の日本の社会問題でもあり、これから更に増え続けていく問題でもあります。
現状、まだまだ考えるべき課題は残っており、これらを解決するためには介護をする本人だけでなく、周りの人の気付きや理解も重要です。
最近顔を見ない、以前と比べて元気がない、聞いても話してくれない等、少しでも変化を感じた時は早めに役所などの人に状況を知らせて必要な機関に実態を把握してもらうことも老老介護を抱える高齢者を救うきっかけになるかも知れません。
親族や近隣に高齢者同士で住んでいる家があったらこのように目をかけ、困り事はないか声を掛けることが介護者の安心につながる可能性も大きいのです。
また、介護サービスを受けることや施設へ入居することに抵抗を感じる人も多いかと思いますが、近年は入居するお客様が快適に過ごせるような特徴を持つサービス付の施設も人気となり、精神面にも良い影響が見られます。
行政や地域の相談センターに相談しながら、適切なサービスを受け共倒れにならない介護生活を送りましょう。